2001年3月1日
レイアウト上の削除と毎日が回答
田島教授「『女房役』は味のある表現」コメント
浅野健一
私は二〇〇一年一月二六日、朝野富三毎日新聞大阪本社編集局長に、高松市成人式騒動の五人逮捕を匿名報道したことについて質問書を出した際、前号で論じた田島泰彦上智大学教授による「『女房役』は味のある表現」というコメントについて次のような質問を入れた。
《貴社は二○○○年一二月一六日に「『開かれた新聞』委員会」からを掲載し、その中で一○月二一日朝刊政治面にあった「首相の女房役の官房長官」との表現について、「政治家のポジションを言うのに『女房役』は不適切で、違和感を覚える」と女性読者からの投書が東京本社にあったことを取り上げています。
この意見について、上智大学教授の田島泰彦委員は「『女房役』が『古い男女関係の観念』とか『男性優位の見方』を示すとは必ずしも考えない。時に立場や役割のニュアンスを伝える味のある表現だ。言葉には敏感であるべきだし差別的な表現は吟味すべきだが、抗議を受けて直ちに『女房役』という言葉を紙面から消す前に、社内外の議論でどうするか模索すべきだ。言葉を抹殺するのは最後の手段だ」と指摘しています。
不思議なことに大阪本社版では「時に立場や役割のニュアンスを伝える味のある表現だ。」という一文が削除されています。
どうして東京と大阪で差が出たのでしょうか。》
毎日新聞東京本社から回答がなかったので、大阪本社にも質問したのだが、森山三雄毎日新聞大阪本社特別報道部長は一月二九日、次のように回答してきた。
《東京と大阪で差が出たのは、紙面スペース、原稿量とのかねあいで、大阪本社版製作時のレイアウト上、2,3行削除する必要があったので削除したということです。》
東京と大阪のレイアウトは確かに異なるが、記事の大きさはほぼ同じで、「時に立場や役割のニュアンスを伝える味のある表現だ。」という二五字を削る必然性はないと思われる。大阪本社の整理記者が、これはあまりにも不適切な見解だということで削除したのではないだろうか。
Copyright (c) 2001, Prof.Asano Ken'ichi's Seminar Last updated 2001.03.03