お知らせ

浅野健一

NHK「爆弾漁法」・対講談社裁判の判決

 2002年11月19日に当初予定されていた、NHK「爆弾漁法」・対講談社裁判の判決公判は2月4日にいったん延期されていたことをこのHPでお知らせしていた。ところが、2003年1月28日に東京地裁から講談社代理人に2月26日に再延期するとの連絡があった。理由は明らかにされていない。

 以下は、参考情報です。
 坂本氏(職種はカメラパーソン)は一九九七年八月二四日、インドネシアのバランロンポ島で、漁民D氏に現金を渡して「爆弾漁法」シーンを撮り全国ニュースで放送した。坂本氏に同行していた支局記者フランス氏が「やらせ」だと告発したが、NHK幹部はこれを握りつぶす一方、坂本氏はフランス氏を解雇した。
 『現代』特別取材班(私もその一員)は、坂本氏が現場で撮影したマザーテープのコピーを入手する一方、D氏やNHKチームのガイドを務めたムクシン氏、カメラ助手らに取材して、二〇〇〇年十月号で報じた。
 ところが、NHKと坂本氏は「D氏へ現金を渡した事実はなく、『現代』記事は虚偽」と断定し、雑誌発売日の前日、一億二千万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。
 昨年十一月十九日に判決が予定されていたが、判決日の六日前に、「二〇〇三年二月四日午後四時半に延期する」という連絡があった。法廷は東京地裁六三一号。
 坂本氏は「二〇〇一年七月にムクシン氏からD氏へ現金が渡っていることを知って驚いた」と証言するなど「やらせ」を事実上認めている。
 既にお知らせしたように、東京地裁判決を前に、インドネシアでも「やらせ裁判」が始まることになりそうだ。こちらはフランス氏が原告で、NHKと坂本氏が被告だ。
 坂本氏の「やらせ」を告発してきたフランス氏の代理人二人が一月一七日、海老沢勝二NHK会長らに最後通告文を送った。NHK側が、東京地裁における陳述書・証言などで、「NHKから金銭を得るために脅迫した全く信用できない人間である」などとフランス氏の名誉を毀損したとして損害賠償、謝罪広告を求めている。フランス氏側は、満足できる回答がない場合、(1)民事訴訟をジャカルタ地裁に起こす(2)坂本氏が「首謀者」の爆弾投擲行為は、インドネシアの刑法、非常事態法(一九五一年)、環境法(一九八二年)に違反するので警察に告発する----と決めている。時効は十八年。坂本氏らは最高で「五年の拘禁刑」となる。
 バリ事件などインドネシア各地で爆弾テロが頻発しており、爆弾漁法の漁民がテロ関連で取り調べを受けるケースも多く、警察・検察は爆弾漁法に厳しい姿勢を示している。

坂本氏は『現代』の取材に対して、「(爆弾の)衝撃がどんなものか知りたかったら、サンゴ礁のない影響のないところで、爆発して見せてもいいよ」とクンダリ基地の海軍大佐に提案されたが断った、と述べた。坂本氏は陳述書の中でも、「ギトー・ウトモ大佐」という名前を挙げて、全く同じことを書いている。
 インドネシア海軍国際広報部のM・ユヌス中佐は一月一五日、ウトモ大佐が退職後に病死したことを明らかにした上で、「海軍としての正式見解を後で出すが、私個人の意見として言いたい。海軍は漁民に対して、爆弾漁法はサンゴを破壊するだけでなく小さな魚などの生態系が壊れてしまうことを啓蒙し、爆弾漁をやめるように生活指導している。海軍大佐が、放送局の撮影のために海へ爆弾を投げてもいいなどということはあり得ない」とコメントした。

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Copyright (c) 2002, Prof.Asano Ken'ichi's Seminar Last updated 2003.01.28