山口正紀・読売新聞記者に支援ネットづくり始まる
2003年2月24日
山口正紀記者に支援のネットワークづくり
浅野健一
救援(救援連絡センター機関紙、電話03−3591−1301)2月号に書きましたが、読売新聞東京本社記者の山口正紀さんが人事攻撃を受けた件で、京都の学生たちから要請がありましたので、彼らの呼びかけ文を掲載すると共に、私の見解を明らかにします。
*「外部」圧力で山口正紀記者を不当配転攻撃
「週刊金曜日」で「人権とメディア」を連載している山口正紀・読売新聞東京本社記者は、二〇〇三年二月一日付けで、記者職を剥奪された。メディア戦略局データベース部から、同局メディア事業部への異動で、「編集記者職」を解かれ、「営業渉外職」への職種変更だ。この経緯については、山口氏自身が同誌一月二四日号で「個人的なことを書く」と断って明らかにしているが、その目的は彼に「読売新聞記」を名乗らせないことだ。
山口記者は、一九八〇年代半ばから一緒に「人権と報道」に関する市民運動を続けてきた同志である。
山口氏は約十年前には、ロス疑惑報道の報道被害者、三浦和義さんを支援したことを問題にした社会部系からの圧力で懲罰人事として、編集局生活情報部から、取材部門ではない現在の局に配転された。山口記者の生活情報部での記事は読者から高い評価を受けていた。また、一月末まで働いていたデータベース部では、明治時代からの読売新聞の記事を分類して差別表現などの点検をして電子化し、新聞協会賞も受賞している。全国の大学、研究機関で高い評価を受けている部門の編集責任者であった。昨年一二月に始めた「昭和・戦後の読売新聞」データベース作りの中心だった。
今回の不当人事は、日本最大の新聞社が日朝交渉報道に関する山口氏の言論を嫌う「外部」の圧力に屈したわけで、事態は極めて深刻である。読売新聞は「外部」がどういう団体、個人なのかを明らかにする社会的責任がある。
「週刊金曜日」の「人権と報道」コラムは、山口氏が隔週、中嶋啓明・共同通信記者と私が四週間に一回ずつ執筆している。「週刊金曜日バッシング」が起きた際、「週刊新潮」は中嶋氏の姓名を書いたが、その号が発売された昨年一一月二一日に、所属するメディア局のN編集部副部長(元・新左翼系活動家、東京大学出身)から電話が自宅にかかり、「社外で書くときは社の許可がいる」と警告された。それから二日後には、「共同通信という社名をはずせ」と通告されている。私が共同通信労働組合で反合理化闘争を展開していたとき、N氏は鹿児島支局時代にいて、同志として闘っていた人だ。
昨年一二月二二日号で対談したノーム・チョムスキー氏は『チョムスキー、世界を語る』(トランスビュー)で、記者が既存システムの規則に抵触すれば、「その人はその瞬間、すでにシステムの一部ではなくなる」と発言している
この国には「企業内記者の表現の自由」がないということなのか。新聞労連は言論を理由に不利益処分を受けた記者を守ると決めているのだから、両記者への言論弾圧に抗議すべきだ。新聞労連やメディア研究者は真剣に考えなければならない。*「山口正紀さんを支援するネットワーク(仮)」呼びかけ人募集
立命館大学にある学生サークル韓国文化研究会のメンバーから、山口正紀さんを支援するネットワーク(仮)の呼びかけ人募集の案内がこのほどあった。彼のサークルでは、昨年の学園祭企画で山口記者を招いて「日朝国交正常化を考える」というテーマで講演会(「週刊金曜日」2002.11.29山口記者の「人権とメディア」欄参照)を開催した。
彼らは山口記者の「記者職」剥奪のニュースを知り、友人と支援のネットワークを作ってみたいという動機からこの取り組みをはじめたという。
以下は「呼びかけメール」(2月20日現在、一部略)だ。
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「山口正紀さんを支援するネットワーク(仮)」をつくろう!呼びかけ人募集中で
す!
一 はじめに <外部の圧力で「記者職」剥奪>読売新聞記者の山口正紀さんが、1月末で読売新聞社の「編集記者職」を解かれ、「営業渉外職」に職種変更されました。この配転の目的は、ただ一点、氏に「読売新聞記者」と名乗らせないことです。具体的に言えば、週刊金曜日「人権とメディア」欄に示している氏の肩書き『「人権と報道連絡会」世話人・読売新聞記者』から、「記者」をはずさせることなのです。原因ははっきりしています。それは氏が、9月以来書き続けてきた「日朝交渉報道」批判に関して、読売新聞社に外部からかかってきた「圧力」なのです。
日朝首脳会談以来、山口正紀さんは週刊金曜日「人権とメディア」欄などで、「読売新聞記者」であることを明記して日朝交渉に関するメディアの報道を批判し続けてきました。それに対して読売新聞社は昨年12月、山口さんの「記者職」を奪い2月1日付で「営業渉外職」に異動させる人事を決めました。
背景には、明らかに山口さんの週刊金曜日記事をこころよく思わない勢力からの「圧力」がありました。そして、読売新聞社はそれに屈したのです。私たちは、日朝報道における報道統制に異議申し立てをし、「新聞記者の言論の自由」を守るために山口正紀さんを支援していきたいと考えています。
支援方法はこれから考えていくところです。支援方法としては、投書やホームページの立ち上げ、集会の実施などを考えています。
現在、呼びかけ人になっていただける方を募集しています。**************************************
二 呼びかけ人(2月20日現在、60名、略)
一緒に呼びかけ人になっていただける方は、@氏名、A連絡先、Bご職業・ご所属などをお書きのうえ、浅野健一asanokenichi@nifty.comまで賛同メールをお願いいたします。三 暫定的な行動として
日朝首脳会談以来、勇気を持って「拉致一色」報道批判と「日韓方式」批判を行なってきた山口正紀さんを支援し、世論の力で「新聞記者の言論の自由」を守るため、読売新聞社への抗議メール・週刊金曜日への投書を呼びかけます。
読売新聞社メールアドレス:webmaster@yomiuri.co.jp
週刊金曜日への投書:tosho@kinyobi.co.jp
(以上)
Copyright (c) 2002, Prof.Asano Ken'ichi's Seminar Last updated 2003.02.24