2004年1月19日

米追随によるイラク参戦に抵抗を

 シンポジウム「東アジアの希望」で本多勝一さん

 浅野健一

 

京都の学生たちが企画した「東アジアの希望」http://easiahope.hp.infoseek.co.jp/)と題するシンポが20031129日、京都で開かれた。私と本多勝一氏が基調講演した。本多氏は米英のイラクへの武力攻撃が不当で、当初から米英を支持してきた日本は抵抗勢力の標的になっていると述べた。「若者へのメッセージを」という質問に、「この前の8・15は日本独自の仕組みが崩壊しての結果だったが、今度の8・15は米国に追随して迎えることになる。そうならないように抵抗してほしい」と述べた。

私は講演の中で、小泉極右政権がイラクへ自衛隊を派兵しようとしていることで、「このところ気分が沈んでいる。日本国籍の日本人でいることが恥ずかしい」と思いを語った。

 

以下は浅野ゼミ聴講生の森類臣氏(同志社大学経済学部4回生)が主催者提供の録音テープから起こした、本多勝一さん講演後の質疑応答部分の記録だ。

本多さんは、起こした原稿に何回か修正、加筆していただいた。心から感謝したい。

以下敬称略

 

@浅野の質問

―本多さんは以前から、日本で新しい日刊新聞を発行したいと言われていて、私が共同通信ジャカルタ支局にいる時も、そのことでお電話いただいたことがあります。共同の特派員辞めてとか、そこまで言われたかどうか忘れましたが。東京でも、若い人たちが自分たちの新聞を作れないかということで、いろいろと動いています。そのことについての進行状況を教えていただきたいと思うのですが。日本版のハンギョレ新聞といいますか、日刊新聞をという可能性についてお話ください。

 

本多 そういうアイディアは十年ぐらい前にあったのですけれども、いや現にあるんですけれども、私個人の状況が実は週刊金曜日に取られてしまって。週刊金曜日というのは、目指すところは同じなのですが、なんといっても週刊というのは限界がありますからね。日刊なり、あるいは総合メディア、今となればテレビやインターネットを含めた総合メディアにすべきだと思いますが。しかし、週刊金曜日はですね、私が日刊新聞のアイディアを出した時に、ある人物が「日刊紙は大変でかなり時間かかるけれども、週刊ならすぐできる」と。まあ郵送もできますからね。一般の書店に出すことも。それはまあそうなんですが。それをやりたいから応援してくれということで。それで「応援」したわけですね。その頃、今TBSの筑紫哲也さんなんかと一緒になってあちこち講演したりして。ところがですね、この週刊金曜日がスタートしてわずか3ヶ月くらいかな。その社長兼編集長をやった言い出しっぺの方が、まあいろいろな事情があってですね、辞めてしまったわけですよ。そうするとですね、財政的に何もだめになったわけではないし、定期購読を呼びかけて応援した責任上しばらく自分が社長兼編集長をやらざるを得なくなった。そのために非常に時間と労力を取られてしまった。今は社長も編集長も新しい人が引き継いでいるわけですけれども。これは非常に痛かったですね。しかし、それはまあ私の個人的な事情でして、新しい日刊紙を必要とする状況はちっとも変わらない。むしろますます必要だということになっております。

今、インターネット新聞をやっている(または計画中の)グループが3つぐらいあるんですね。こういう方たちとも連携してですね。もう私自身は70代になってエネルギーもアイディアも出にくくなってますから、そういう若手の方たちと共に進めようと。そんな状況になっております。しかし、まだ具体的にですね、ハンギョレみたいな形になる、つまり株主募集とかそこまでいってません。ただ少なくともそうことをやる時には、スタートの前に、こういう新聞ができれば取ってくださいますかという調査が必要です。これが10万確実にあればスタートしようと。そういう状況ですね。そういう世論調査をするための資金がある程度いる。これが何十億円とは必要ないけれども、二億くらいは必要だという見積もりですね。それをやった上で本格的に始動したらどうかと。その時には、浅野さんにも是非とも力になっていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。

 

A会場の聴講者からの質問

―なぜ若者が社会的な問題に立ち上がらないのかということに対してですが、本多さんの、アメリカの暴力に対する怒りといいますか、警鐘というのはよく分かるのですが、映像も含めて、強烈なイスラム原理主義というものの暴力といいますか、我々が強烈に9・11で体験したと、足がすくんだと。そのすくみと言いますかね、バランス感覚からしてですね、アメリカの暴力ともうひとつの勢力の暴力というものの強烈さに足がすくんでいるのではないかと思いますが、本多さんは、もうひとつの勢力の暴力に対してはどのように思われるのか、また分析されるのか、お聞きしたいと思います。

 

本多 もうひとつという意味はいわゆる「テロ」のことですか。

 

―いわゆるイスラム原理主義勢力というのでしょうかね。正確にはよくわからないのですが。

 

本多 例の9.11事件はまだどこがやったのかはっきりしないので、別の問題にしまして、最近の例えばイラク国内やトルコのイスタンブールのいわゆるテロというのがありますね。これはですね、もういわゆるテロとは違うのではないか。まあテロといってもいろいろな定義があるし、性格が違いますから十把一からげにできないのですが、アルジェリアのレジスタンスとかそういうものに近くなっているのではないかと。ベトナムの場合は農村とジャングルが舞台ですよね。しかし、イラクは砂漠地帯ですから、都市のゲリラになってきますね。そういうことでああいう形が出てきたと。しかしそれ以外にですね、アメリカがああいうふうに国連を無視して一方的に攻め込んで、世界最大の武力による巨大テロで攻め込んで占領している時に、他に方法があるだろうかと。あのような方法以外になにか有効な方法があるだろうかと疑問を持つわけですね。ただし無差別になる可能性がありますが。無差別といってもあの場合はそれなりの目標を持ってやっているわけですね。だから、それに巻き込まれたイラク人という問題がありますが、結局侵略に協力しているイラク人も事件に巻き込まれざるを得ないという状況で、それなりの効果が出ていると思うのですね。レジスタンスは日ごとに激しくなっております。今月なんかもっともすごいと思うのですが。

 効果というのは、例えば国連機関や国際赤十字の機関も引き揚げてしまった。アメリカが孤立化していく。それから日本に対しても効果が出ていますね。本来なら年内に自衛隊出そうなんて言っていたのができない。それに平和的に復興支援なんて言ったって、占領軍のアメリカはちっとも引き揚げませんからね。侵略しておいて、尻ぬぐいを他国にやらせる。せめて引き揚げて国連主体にすべきです。最も基本的なことですが、米軍は国連を無視して全く一方的に攻め込んだ明白な侵略なのですよ。国家的巨大テロ。これに対するゲリラ的レジスタンスとしてのテロと同列にはできません。あれが当然だと考えております。

 

―ありがとうございました。

 

B森 類臣の質問

 

―先ほど本多さんが、「若者に教えていただきたい」とおしゃっていたので、一応若者代表として話させていただきます。僕は周りの友達に「学生運動などをなぜやらないのか」と聞いたところ「格好悪い」とか「流行ではない」とか言っていたのですが、僕はニュースが、自分たちの生活にすごく関わってくると思うし、ニュースに対して関心を持つことは大事だと思いますが、本多さんはどう思われますか。

 

本多 質問の趣旨がよくわからないのですが・・・。

 

―そういう若者に、本多さんからメッセージをお願いします。

 

本多 メッセージですか。メッセージを言える立場でもないし嫌いなのですけれど・・・。(笑)困りましたね。「頑張れ」って言ってもしょうがないし(笑)現状を、現在をよく見てほしいと。これがメッセージですかね。現在の日本を。これは何年か何十年か後に歴史をさかのぼってみればですね、おそらく今は大変な時代になっていると思いますよ。自衛隊の海外派遣など58年前の敗戦以来最大の事件です。しかし当時の8月15日というのはまだ今よりよかったかもしれない。「いい」という言い方はおかしいのですけれどね。とにかく日本独自の仕組みと歴史の挫折でした。しかし今はアメリカの中でも特にバカげたブッシュ政権にそっくり付いていって、その結果による頓挫というか、8月15日になると思いますからね。これは58年前よりもっとよくない状況ですね。アメリカの植民地軍ですよ。フランス植民地のセネガル兵。あるいはベトナム戦争でアメリカの意を受けて派兵した韓国兵の立場。実に情けない「日本陸軍」ですね。フランスもドイツもロシアもこんな情けないことをしないでしょう。ブッシュのペット小泉にアメリカ盲従の傀儡軍にされた自衛隊員がかわいそうです。憲法改悪も関連して戦後最大の危機。だから今の状況をよく見ておいてほしい。見るだけじゃなくて、それぞれの方法で抵抗して欲しいと思います。

 

―ありがとうございました。

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