浅野ゼミ11期生活動内容報告


Profile


 私たちは同志社大学社会学部メディア学科、浅野健一ゼミの11期生です。

 私たちは「海外メディアから見た日本のメディア」をテーマに、
2004年4月から研究活動を始めました。この4月からは4回生になり、
いよいよ共同研究も佳境へと入っていくわけですが、
その前に、自分たちの研究活動をインターネット上でも公開したいと思い、
このたびゼミHPに中間報告をアップします。


 まずは、2004年度中に行なった活動について、順次アップしていきたいと思います。



<共同研究>

 11期生が全員で研究している「海外メディアから見た日本のメディア」について。
 研究方針などを載せています。



<インタビュー・講演会>

 浅野ゼミでは、様々な人に直接話を聞くことを重視しています。
 ここでは11期生が主催したインタビュー・講演会などについて紹介します。



<出版>

 2005年1月に出版されたブックレット
「イラク日本人拘束事件と『自己責任論』報道」についての
詳細情報を載せています。



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「海外メディアから見た日本のメディア」をテーマにしたきっかけについて



 「危険な目に遭ったのは、政府の『退避勧告』を無視した結果なのだから、助けてもらえると考えるのが間違いだ。すべては“自己責任”で処理されるべきだ」

 20043月、イラクで3人の民間人が拘束された時、日本国内の多くのマスメディアが一斉にこのような主張を展開し、被害者批判に夢中になった。朝日新聞など被害者をバッシングする社説を載せていない新聞でも、「自己責任論」を否定したり、「自衛隊を撤退させるべきだ」という意見を表明したりすることはなかった。人質となった3人がまだ解放されておらず、無事かどうかさえわからない状態のときに、である。

 このような人命を軽視する報道によって、被害者バッシングへと世論を煽っていった日本のマスメディアに比べ、6月に同様の人質拘束・殺人事件を体験した韓国のマスメディア各社は、人質の行動を非難するような報道は一切しなかった。むしろ、犯人グループに対する非難が中心であり、派兵撤回を主張する進歩的なメディアもあった。

 日本の被害者批判に対しては、世界各国のマスメディアから疑問の声が上がった。怒りは犯人グループに向けられるべきものであり、無事に帰国した被害者たちは温かく迎えられなければならない、という考えが、世界のスタンダードなのである。

 仏ルモンド紙が「日本は3人のボランティアやジャーナリストたちを誇りに思うべきだ」として日本政府やマスメディアを皮肉ったことや、その他各国の著名紙も日本の世論に驚いているということが日本国内でも少しずつ知られるようになって、被害者に対するバッシングはようやく鎮まっていった。しかし、日本の報道が、政府にとって都合の悪いことは取り上げない、およそ民主主義的とは言えないしろものだということに違いはない。

 このように日本の報道は、世界のほかの民主主義国家から見ると、おかしな点だらけなのである。だが、日本国内から一歩も出ず、日本の新聞だけを読んでいたのでは、そのことに気付かない可能性が大きい。私たち11期生ゼミはそれを危惧して、日本では当たり前だと考えられている報道のあり方が、海外から見るとどのように捉えられるものなのか、を研究することにした。


   <研究方針>

 以下は、私たちが「海外メディアから見た日本のメディア」という共同研究を始めるに当たって決めた“研究目的”である。共同研究の大まかな方向性について述べている。


 日本のメディアによるイラク日本人拘束事件の被害者に対するバッシング報道は海外で激しく非難された。また皇太子妃病状などの皇室報道、日本の過去の歴史、朝鮮による日本人拉致事件や、日本独自の記者クラブ制度も海外で批判的に論評されることが多い。海外メディアに日本のメディアの特質や問題点はどのように映っているのだろうか。海外が日本メディアをどのように見ているかを調査し、海外と日本においてのメディアの在り方の違いを明確にしたい。海外メディアにおける報道と、日本メディアにおける報道とを比較し、両者の相違点、共通点を明らかにしていく。

 また、日本のメディアが他国の目にいかに映っているかを知る媒体として、各国の報道だけではなく海外の専門家や研究者の論文、論説なども参考にしていきたい。これらの作業から、我々自身が日本メディアの現状と問題点を学んでいく。その問題点を踏まえて、現代日本の現状に一石を投じられるような改善点を提示することで、この研究が大きな意義を持つと考える。


   <研究内容>

 以下の5つのグループに分かれて、それぞれのテーマを研究する。

     @ 植民地支配(宗教含む)
     A テレビメディア(公共放送・デジタル化)
     B 記者クラブ
     C 皇室報道
     D 日本人拘束事件報道・自衛隊

 各班はこの一年間、主に文献・インターネット・新聞などから基礎知識を得てきた。海外の記事は日本語に翻訳する作業を重ねて、それぞれの題材ごとにデータベースを作っている。研究を進めるうちに湧いてきた疑問などはインタビューやアンケートをする際に役立っている。

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インタビュー・講演会の報告とゲストの紹介
   2004年度

 
6月9日 「自己責任論」を考えるシンポジウム
※大学院・学部の浅野ゼミで主催
 
◎ダグラス・ラミスさん
  (元津田塾大学教授、現在は沖縄で反戦のための執筆・講演活動を続けている)

 ブライアン・オオクボ・コバートさん
  (インディペンデントジャーナリスト、15年にわたり、日本で英字新聞の記者・編集者やUPI通信東京支局の大阪特派員をしている)

 森吉弘さん(司会)
  (NHK大阪放送局アナウンサー)

 浅野健一教授

 
6月26日〜27日 四大学合同ゼミ合宿in同志社びわこリトリートセンター
※同志社大学(大学院)浅野健一ゼミ、京都精華大・野中章弘ゼミ、京都文京大・坂上香ゼミ、甲南大・北原恵ゼミ
 
 野中章弘さん
  (ジャーナリスト、アジアプレス・インターナショナル代表、東京大学・目白大学・京都精華大学・早稲田大学非常勤講師、03・04年度朝日新聞紙面審議会委員、アジアを中心に第三世界の問題を取材し、新聞・雑誌・テレビなどで発表している。87年、報道規制の厳しいアジアのジャーナリストのネットワークであるアジアプレス・インターナショナルを設立した)

 坂上香さん
  (映像ジャーナリスト、京都文教大学人間学部文化人類学科助教授、エイズ・死刑問題などを主題にドキュメンタリー制作や執筆活動をしている)

 北原恵さん
  (甲南大学文学部社会学科教員、表象文化論・ジェンダー論・美術史が専門)

 ブライアン・オオクボ・コバートさん

 浅野健一教授

 
6月30日、31日 今井紀明さん講演会
※大学院・学部の浅野ゼミで主催
 
 今井紀明さん
  (フリーライター、04年3月立命館慶祥高校を卒業後、取材のために向ったイラクで日本人拘束事件の被害者となる)

 
7月8日 文峯秀さん、ゼミでゲスト講義

 文峯秀さん
  (京都朝鮮中高級学校教員、在日コリアンの三世)

 
8月25日 藤田孝夫さんインタビュー

 藤田孝夫さん
  (京都市伏見区で農業を営んでいる。沖縄のサトウキビ農家を軽視する京都府知事の発言(’87)に怒りを覚え、90年に府知事を提訴、92年には京都市長と京都市政記者クラブを相手取って訴訟を起こしたが、いずれも棄却、または敗訴に終わった)

 
8月30日〜9月5日 韓国合宿

 平井久志さん (共同通信社ソウル支局長)

 金君子さん (ナヌムの家のハルモニ)

 沈揆先さん (東亜日報経営戦略室、同・元東京特派員)

 10月21日 綿井健陽さん講演会


 綿井健陽さん
  (ジャーナリスト、アジアプレス・インターナショナル所属、9・11後のアフガニスタンや米軍空爆下のバグダッドで取材・リポート)

 
10月28日 中村真千子さんとの懇談会

 中村真千子さん
  (毎日放送報道局ニュースセンター府政担当記者、浅野ゼミ4期生)

 
11月10日 田中伸尚さんインタビュー

※田中さん講演会(大学院を中心とした有志主催)開催時に、インタビュー
  
 田中伸尚さん
  (ノンフィクションライター、元朝日新聞記者、天皇制問題・戦後責任問題・国家と個人の自由の問題などを主なフィールドにしている)

 
1月11日 ブライアン・オオクボ・コバートさん、ゼミでゲスト講義

 11月16日 高田昌幸さん講演会・OBGを交えてのパネルディスカッション


 高田昌幸さん
  (北海道新聞社編集局報道本部次長、北海道警の裏金問題を、長期にわたる粘り強い取材で暴いてきた)

 竹内誠さん
  (高知新聞社社会部県警本部キャップ、03年7月から、高知県警捜査費問題に取り組んでいる)

 他3名

 
12月2日 神林毅彦さん、ゼミでゲスト講義

 神林毅彦さん
  (米紙記者、主にクリスチャンサイエンスモニター、ワシントンタイムズなどに記事を書く。明治大学文学部を卒業後、米国ミシシッピ大学大学院ジャーナリズム学部で学んだ。著書に『ミシシッピを知ると矛盾大国アメリカが見えてくる』解放出版社2002年)
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ブックレット『イラク日本人拘束事件と「自己責任論」報道』
 

 共同研究のテーマを決めるきっかけともなった、2004年4月のイラク日本人拘束事件について、
研究した内容をブックレットの形に仕上げた。私たちのゼミは、拘束された今井紀明さんを招いての講演会や、日本で活動している外国人ジャーナリストを招いてのパネルディスカッションなどを開き、また、日本の新聞と海外の新聞の論調の違いを細かく調査し、海外の多くのメディアが日本のメディアの報道に対して疑問を感じていることがわかった。

 日本のメディアは「自己責任」という言葉を多用し政府の発言を繰り返すにすぎなかった。自衛隊派遣に対する違憲性を訴えることもなく、罪無き市民を批判するというメディアの姿勢はメディア自らの責任を放棄していると言っても過言ではないだろう。
 
 このブックレットを通して、日本のメディアの無責任な姿勢が見えると思う。政府の発言と日本メディアの報道、また海外のメディアの報道を比較することにより、日本のメディアの未成熟さを実感した。        

 GENJINブックレット47
 書 名:イラク日本人拘束事件と「自己責任論」報道
 編 著:同志社大学浅野健一ゼミ
 判 型:A5・120頁
 定 価:1000円
 出 版:現代人文社


 目次

 1 はじめに…ゼミ生【2頁】

 2 「僕が伝えたいこと」…今井紀明 【15頁】

 3 シンポジウム・「自己責任」論を考える

  …ダグラス・ラミス氏(元津田塾大学教授)・ブライアン・オオクボ・コバート氏
   (元UPI通信東京支局大阪特派員)・浅野健一(同志社大学教授)・
    森吉弘氏(NHK大阪放送局アナウンサー・司会)【20頁】

 4 海外メディアの「自己責任」論を読む(各紙の翻訳と編集)…ゼミ生【40頁】

 5 検証・香田証生さん殺害事件報道――イラクでの拘束事件で初の犠牲…浅野健一 【20頁】



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