浅野からドイツW杯の報告とイベント案内
2006/06/29
■ドイツから帰国

 6月20日から25日ドイツに滞在しました。在日朝鮮人の人たちと一緒にサッカー・ワールドカップ(W杯)ドイツ大会の日韓共同応援ツアー(20人)に参加していました。
1998のフランス大会から在日朝鮮人と日本人で共同応援をつくり、私はそのメンバーでした。韓国籍の在日の人が多いのですが、朝鮮籍の在日の人たちも参加しています。その後「KJクラブ」を結成して日本と韓国の試合を応援。2002年日韓共同開催の際、300人で共同応援、多くのメンバーがボランティアをしました。
22日の日本−ブラジル(ドルトムント)を見ました。Jリーガーと大学の体育会クラブぐらいの差があったというのが実感。23日は韓国―スイス(ハノーバー)の試合で一緒に応援しましたが、こちらも負けてしまいました。韓国がアジアの希望を実現してくれると思ったのだが、残念。
グループリーグの48試合すべてが23日終了。アジア勢は4チームすべてが敗退。日本、イラン、サウジアラビアがグループ最下位、白星は韓国の1勝だけと惨敗。2010年南アフリカW杯のアジア出場枠が減らされる可能性が出てきました。W杯には友人のジャーナリストも多数取材に来ていました。W杯とメディアについても調査しました。
 こういう時期に、日本人と在日朝鮮人とが一緒に応援する意義は大きいと思う。朝鮮新報などに記事を書く予定です。
■秋田“狂乱”報道を徹底検証

 今日はホテルで「創」8号用に、秋田事件報道の原稿を書いています。
10日から13日までの秋田の現地調査では、逮捕された女性の家族からmedia frenzyingの実態を詳しく聞きました。弁護人、学校関係者、報道関係者からも聞き取り調査しました。
 先々週の週刊金曜日に書きました。「創」8月号(7月7日発売)に14ページ書きました。
 パブリック・ジャーナリスト、崎山勝功さんが、女性の逮捕後、私に取材して記事を書いてくれました。「PJオピニオン」で、《過熱した事件報道、消えた「推定無罪の法理」》というタイトルで報じた。



 http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2057917/detail
 【PJニュース 06月08日】− 秋田県藤里町の小学1年生(7)が殺害された事件で、秋田県警捜査本部は4日深夜に、今年4月に水死体で発見された小学4年生児童(9)の母親(33)を、死体遺棄容疑で逮捕したと発表。母親の逮捕を受けて翌日の新聞各紙は大々的に報道した。(一部地方紙は締め切りの関係上「逮捕状を請求」「任意で事情聴取」と報道)テレビも朝から情報番組で容疑者逮捕のニュースを流した。
 だが、この事件は週刊誌が先行して過熱報道を繰り広げ「週刊新潮」6月1日号は「『犯人』はわかっている!」「新聞が書けない『秋田の児童殺人』」の見出しで6ページの特集を組み、「週刊現代」や「週刊文春」などが加わり、母親のプライバシーなどを書いた。「週刊朝日」「週刊ポスト」などが母親の「犯人ではない」との主張を掲載したが、逆に母親が怪しいという印象を与えてしまった。あまりの過熱ぶりに5日付読売新聞は「一部週刊誌は過熱取材 新聞・TVも自浄作用必要」との記事を掲載し、同じく6日付読売新聞は「過熱取材防止 課題残る」や、6日付朝日新聞「報道被害、どう防ぐ」は、過熱した取材現場、報道のあり方を取り上げた。
 元共同通信記者で同志社大学社会学部メディア学科教授の浅野健一氏は、一連のテレビでの事件報道について「テレビ報道には、当局に捕まった市民に対し、裁判で有罪が確定するまでは無罪を推定されるという無罪推定の法理を尊重する姿勢が全くない」と批判する。また、母親が4日午前6時頃から延べ17時間に及ぶ“任意”での事情聴取を受けた後に逮捕という点についても、浅野教授は「報道には17時間もの『任意』の聴取というのはありうるのかという批判的視点も懐疑的な姿勢も全くない」と指摘する。6日付常陽新聞では「捜査本部によると、容疑者が前夜の調べを終え、休んだのは5日未明。体調が優れない様子だが、調べに支障はない程度という」と報道されているように、捜査に行きすぎがないか危惧される。
 当初から、秋田県警は「被害者支援の一環でマスコミ対策」の名目に、警察車両を24時間待機させ、「過熱取材からの被害者保護を口実に、容疑者としてマークしている人物の行動監視をしていた感が否めない」「取材攻勢から身を守ってくれるはずの警察が、実は身柄の拘束を狙っていたことになり、被害者保護を捜査機関である警察に任せる危うさが浮き彫りになったと言える」(5日付読売新聞より)と、被害者支援の取り組みを都合よく利用していた実態がうかがえる。
 容疑者の母親と秋田県警の間では、水死体で発見された小学4年生の子供の死因をめぐって、「事故死」で片付けようとする県警側と、再捜査を求める母親が対立し、母親はテレビ朝日の「テレビのチカラ」に登場し、子供の水死の再捜査を訴えていた。
 しかし、警察に逮捕されたことで状況が一変し、「FLASH」6月20日号では「鬼母逮捕!」の見出しが付けられ、あたかも自分の子供と小学1年生児童を殺したかのような印象を与える記事が掲載された。また、テレビ各局は自宅前に陣取る報道陣に向かって「撤収してください」と叫び、カメラを叩くシーンを繰り返し放送したうえ、コメンテーターによる発言で「いかにも怪しい人物」の印象を与える番組構成を行った。
 新聞各紙も「これで○○君(記事では実名)も浮かばれると思う。小さな町でいろんなうわさが飛び交い、皆が疑心暗鬼になっていた。容疑者逮捕で少し安心した」(6日付茨城新聞より)と、いうコメントを掲載し、容疑者を加害者と断定した記事を掲載している。
 浅野教授は「今回の事件でも集団的取材による個人と地域に対する名誉・プライバシー侵害が問題になった」と集団的取材による人権侵害(メディア・フレンジング、media frenzying)を問題視し、週刊誌の報道についても「週刊誌への情報提供者は新聞、通信社の記者であろう。記者たちが県警幹部や捜査員から得た情報がほとんどだ」と週刊誌記事の手の内を明かした。
 また、浅野教授は、新聞報道についてもテレビ同様に「今回の事件報道を見ていると、NHK、共同通信も含め、当局に捕まった瞬間から、被疑者を犯人と断定している。その後は、DNAが一致した、タイヤ痕がどうしたとか、殺害をほのめかし始めたなど捜査当局がリークした情報を裏取りもせずに垂れ流している。こうした情報源、情報の入手ルートが全く明示されず、『一致した』『分かった』などと書いて、根拠もなく捜査を神聖視する姿勢は全くない」と改めて批判し、「過去の松本サリン事件などの冤罪事件の経験が全く生かされていないように思えるが、逮捕をクライマックスにする犯罪報道のあり方を根本的に、裁判報道に変えていくなどの改革が必要だ」と、犯罪報道の改革を提唱した。
 2009年(平成21年度)から裁判員制度が導入されるが、「推定無罪の法理」を無視し、マスコミ報道による予断と偏見を持った裁判員に裁かれるのでは、刑事裁判の信頼性が問われる。ましてやインターネットが普及している現在、インターネット掲示板の書きこみに影響された裁判員ならば、なおさら予断と偏見に基づいた公判が行われる恐れさえある。「警察が逮捕=犯罪者=有罪認定」というまるで江戸時代並みの単純な考えがまかり通るならば、1967年に茨城県利根町で起きた布川事件の再来は避けられない。「推定無罪の法理」という法律の世界の常識を口にしただけで、「人殺しの味方」とレッテルを貼るのは問題がある。日本は仮にも法治国家である。また、法によらない「2ちゃんねるリンチ」は、誰の為にもならない自己満足の愚行でしかないことを認識しなければならない。【了】

 ※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJニュースはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。パブリック・ジャーナリスト 崎山 勝功【茨城県】
■京都で支援会合

 7月5日午後1時15分から、に文春裁判の第3回口頭弁論が京都地裁で行われます。翌日の6日午後7時から京都ガーデンパレスで、近畿の友人たちと同志社大学の学部と大学院の学生たちが「浅野さんを励ます会&出版記念会」を開いてくれます。私の近著『戦争報道の犯罪』(社会評論社)の出版記念と文春裁判を支援する会合です。
 主催は、私の友人たちがつくった「浅野教授の文春裁判を支援する会」(略「浅野支援会」)で、この会は東京と京都に事務局を置いて活動中です。
 6月8日には、東京で「浅野さんを励ます会」を開催してくれ60人が来てくれました。
 7月6日の会では、霍見芳浩(つるみよしひろ) ニューヨーク市立大学教授も記念講演してくれます。
 浅野ゼミの卒業生も多く参加してもらいたいと思っています。
 会の予定は下記をご覧ください。 

                記
                 
主催:「浅野教授の文春裁判を支援する会」(略「浅野支援会」)
日時:2006年7月6日 午後7〜9時
場所:京都ガーデンパレス
〒602-0912京都市上京区烏丸通下長者町上ル龍前町605
TEL: 075-411-0111
URL:http://www.hotelgp-kyoto.com/
◆地下鉄:地下鉄 丸太町駅2番出口徒歩8分、今出川駅6番出口徒歩8分

<プログラム(予定):?司会:「浅野支援会」京都事務局>

1.「はげます会&出版記念会」の趣旨説明、プログラムの説明
2.霍見芳浩(つるみよしひろ) さん(ニューヨーク市立大学教授)特別講演 題「米国よりひどい日本メディア」
3.文春事件の流れ(パワーポイントを用いての説明)
4.弁護団からの報告
5.支援者からのコメント
6.浅野教授のあいさつ

●「浅野教授の文春裁判を支援する会」連絡先
【東京】山口正紀 
【京都】〒604−0971 京都市中京区富小路通丸太町下ル富友ビル3階 堀和幸法律事務所
     (メール:on-sk@hotmail.co.jp FAX:075−231−5752)

7月6日の集会の詳しい案内など必要な方はメール(on-sk@hotmail.co.jp)で連絡ください。
■大成功だった広河隆一さんスライド講演会

 5月28日(日)の広河隆一さんスライド講演会は大成功でした。約200人の参加でした。ジャーナリズムのあり方を中心に語ってくれました。企画から後片付けまでの長い間の、4回生と院生、後輩学生たちのがんばりに感謝しています。以下、簡単な報告です。



 広河さんは講演で、世界の戦場や放射能汚染地の現場に行き撮影した写真を見せながら、「ジャーナリストがいないところで悪いことが起こっている。封鎖された場所こそ危ない。政府が危険だというところだからこそ、ジャーナリストは行かなくてはならない」と強調した。
「紛争地域では外国人ジャーナリストがいるだけで残虐行為が行なわれにくいため、住民から歓迎される。起きたことを伝えるだけでなく、起こってはいけない事を起こさないようにすることも我々の大事な仕事だ」と話した。
 質疑応答でジャーナリストとは何かと問われた広河さんは、「市民が権利を行使するためには、社会で起きていることを知る必要がある。ジャーナリストは市民の知る権利を実現するために動くのがジャーナリストジャーナリストとは、人々が生きる権利や幸せになる権利を行使する為に存在する」と答えた。
 講演後の質疑応答で、「かわいそうな少女や女性の写真を撮って人々の感情に訴えて 気を引こうとするなんて卑怯だ」と批判した人がいた。この発言を聞いたある学生は「命が危険にさらされる場所へでも取材に行く広河さん。行動を起こさずただ文句しか言わない人より、断然広河さんの生き方のほうが素晴らしい。私たちが目をそむけてはいけないその悲惨な状況を、人々に代わって代表して写真に撮り、記事を書くジャーナリストたち。私たちは彼らから多くを学び、また支えていく必要がある」と感想を述べた。]
 広河さんは深夜までゼミ有志と語り合ってくれました。30日、私の携帯に電話をくれました。「同志社の浅野ゼミはすばらしい。いい学生さんと一緒でいいいですね」と言われました。写真展の準備で忙しい中、ありがたい言葉でした。今日の写真展のオープニングに招待されましたが、その日はゼミで行けませんでした。また、DAYS JAPAN 8月号に記事を書くことになりました。光栄です。

 毎日新聞が29日京都版で書いてくれました。



 講演:デイズ・ジャパン広河隆一編集長、現地取材の重要性語る−−同志社大 /京都

 ◇戦場写真など基に

 写真報道誌「デイズ・ジャパン」の広河隆一編集長が28日、上京区の同志社大で講演を行った。世界の戦場や放射能汚染地で撮影した写真などを題材に現場に行くこと、そこから伝えることの重要性を語りかけ、約150人が聴き入った。
 広河さんはこれまで、中東とチェルノブイリを中心に活動。爆弾でやけどした少女▽家宅捜索するイスラエル兵とおびえるパレスチナ人▽乳児に放射能の含まれた母乳を与える母親−−といった写真を示し、現地で直接見てきた様子を説明した。
 また、中東など紛争地域ではジャーナリストの目前で残虐行為が行なわれにくいため、外国人ジャーナリストは住民から歓迎されるという実体験を例に「起きたことを伝えるだけでなく、事件を起こさないようにすることも我々の大事な仕事」と話した。
 質疑応答でジャーナリストとは何かと問われた広河さんは、「人が幸せになる権利を行使するためには、社会で起きていることを知る必要がある。それを実現するために動くのがジャーナリスト」と答えた。【細谷拓海】毎日新聞 2006年5月29日]
■ゲスト講義などの予定

いくつかイベントのご案内です。


@元「べ平連」小田実さん講演会

 6月29日(木)3講時、1:15〜2:45(Brian Covert講師の講義「国際コミュニケーション論」ゲスト。同志社大学今出川校地新町校舎 臨光館301
 4講時(3・4回生合同で浅野ゼミ)でゲスト講義。同じ新町校舎Z・45A教室。
 私は高校生のときに小田さんのご本『何でも見てやろう』をいとこから紹介されて、読んだのが記者を志すきっかけの一つになりました。また大学時代には、「ベ平連」の活動に友人と共に参加したこともあります。記者になってからも小田さんの活動や著作や講演から多くのことを学ばせてもらいました。現在、同志社大学は、かつてのリベラルな姿を次第に消しつつあります。このような状況下で、小田さんに講義していただけるということは、大きな意味があるとも思っております。
 小田さんは「なんでも見てやろう」「HIROSHIMA」などの著者。http://www.odamakoto.com/jp/
 ゼミへの聴講希望者は浅野まで連絡を。


A河野義行さんが同志社で講演

 河野義行氏(松本サリン事件被害者、前長野県公安委員)が7月5日(水曜)午前10:45から学際科目、「マスメディアの現場」(科目責任者・渡辺武達教授)でゲスト講義します。同志社大学今出川校地、明徳館21番教室。参加の事前申し込みは不要です。会場へ直接お越しください。無料。
 河野さんが事件後、最初に公の場で講演したのは同志社が初めてです。これまでにも何回か同志社に来ておられますが、今回は秋田事件などの例も挙げて、94年当時とメディア状況は変わっていないことを話してくれると思います。


B霍見芳浩さん講演会

 同志社大学社会学会の主催で、国際経済学の権威である霍見芳浩(つるみ・よしひろ)ニューヨーク市立大学教授による下記のような公開講演会を開催します。
 教授は6月末からの日本訪問の機会を利用して、同志社の学生たちに、イラク戦争で疲弊する米国の現実と今後を知ってもらいたいということで、京都まで足を伸ばしてくれることになりました。平日の午前中ですが、一般市民の参加もぜひ参加ください。
 
               記  

日時:7月6日(木)午前10:45〜12:30
場所:同志社大学今出川校地新町校舎臨光館205番教室(R205)、京都市営地下鉄今出川駅5分の出川校地新町学舎
講演者:霍見芳浩(つるみ・よしひろ)ニューヨーク市立大学経営大学院
演題:「明日の日本を今の米国にしないために」
予約不要。無料。
問い合わせ先:浅野または同志社大学社会学会(075−251−3411)

霍見芳浩(つるみ・よしひろ)氏略歴:

 1935年熊本県生まれ。1960年慶應義塾大学経済学部卒業。同大学院、助手を経て、米国ハーバード大学で経営学修士号(MBA)、さらに1968年、日本人として初めて経営学博士号(DBA)を取得。その後、ハーバード大学、コロンビア大学、カリフォルニア大学などの教授を経て、現職。太平洋経済研究所理事長。『脱日本のすすめ』『日本企業繁栄の条件』『日本再活論』『脱・大不況』『日本の再興』『アメリカのゆくえ、日本のゆくえ』など著書多数。
 霍見さんは、ハーバード大学大学院の教授時代、ビジネス・スクール(MBA)コースにいたブッシュ現大統領を教えた。米メディアの功罪についても詳しい。]
   

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