Asano Seminar:Doshisha University
HOME新着情報
講演会報告
戦争を放棄した
日本国憲法第9条を世界に広げよう

アレン・ネルソン氏講演会
『戦争の真実を語る』
〜To End the Misery of War〜
※本記事は2007年8月に掲載されましたが、さらに詳しい講演内容をの詳報として付け加えました。記事の続きをご覧ください。
 
アレン・ネルソン氏©浅野ゼミ

 ベトナム戦争の経験者であり、沖縄基地反対運動も熱心に行っている、アレン・ネルソン氏が7月12日(木)、同志社大学今出川校地新町校舎で講演会を行った。
 主催は社会学部メディア学科と同志社大学社会学会。ネルソン氏は、自らの泥沼の戦争体験をもとに、戦場での現実について語った。

 戦争は、映画と違って、腐乱臭にまみれたものであること。敵に撃たれても、即死できる可能性は低く、数時間苦しんだ後に死んで行くこと。逃げ遅れる高齢者、女性、子どものこと。死体を積み上げ、もげた体の部品を拾い歩くこと・・。

 ネルソン氏は、いかに本物の戦争がおぞましいかを聴衆に語りかけた。そして同時に、その戦争に行かせられるのは、権力者たちの息子ではなく、最も貧しく、兵隊になるしか術がない人々であるのだ、と述べた。

 彼は戦争を体験した後、自分自身も除隊後にPTSD(戦争後遺症)に悩まされ、家族との不和や、ホームレス生活を経験している。自分の苦しみを乗り越え、今は同じような境遇に未だ苦しむ人々や、戦争に行かざるを得ない若者たちのケアに当たっている。「アメリカのホームレスの80%はベトナム戦争経験者である」とネルソン氏は言う。いかに戦争が人の人生を狂わせるのかは、明らかである。

 ネルソン氏は「日本は米軍に今も占領されている。米国の第51番目の州のようだ。日本政府に何かを頼んでも意味がない。米大統領に要請した方がいい」と言い切った。

 今、日本では、改憲が政治で争点となっている。憲法第9条を変えることが、安部政権の大きな目標であるが、ネルソン氏はこの改憲案に対し、異論を唱える。彼は、改憲の動きをどう思うかと聞かれ、こう答えた。「日本の憲法第9条を見た時、私は衝撃を受けた。軍隊を持たず、戦争をしないという宣言は、大変すばらしく貴重な憲法である。国が憲法を守る事は当たり前であり、外国からの干渉も受ける必要などない。なぜ今、日本政府は憲法に違反して、米国の要請でイラクへ自衛隊を出し続けているのか疑問だ」。

 戦争の恐ろしさを、身を持って知る人の言葉である。ネルソン氏は「暴力では社会をより良い方向へ変えることはできない」と強く訴えた。過去の過ちに遡るようなこの9条改憲は、時代のあるべき流れに逆らっているのではないか。

 この日の講演会には、同志社大学の学生以外にも、ベトナム人を家族に持つ方や、新聞記者、他に多くの一般の方々も訪れた。それぞれが講演に感銘を受け、講演会終了後には、ネルソン氏に、握手と本にサインを求める長い列ができた。

 (浅野ゼミ3回生・戸田菜津子)

掲載日:2007年8月10日
詳報

 7月12日(木)、同志社大学にて、ベトナム戦争の経験者であり、沖縄基地反対運動も熱心に行っている、アレン・ネルソン氏が講演会を行いました。ネルソン氏は、実際の泥沼の戦争体験をもとに、いかに本物の戦争がおぞましいかを聴衆に語りかけたのです。
 彼は、自分自身もPTSD(戦争後遺症)に悩まされ、家族との不和や、ホームレスを経験しています。自分の苦しみを乗り越え、今は同じような境遇に未だ苦しむ 人々や、戦争に行かざるを得ない若者達のケアに当たっています。アメリカのホームレスの80%はベトナム戦争経験者であると言われていることをご存知でしょうか。
 ネルソン氏は、日本でここ数年取沙汰されている9条改憲に対して、「憲法9条を見た時、私は衝撃を受けた。これは大変すばらしく貴重な憲法である。国が憲法を守る事は当たり前だ、外国からの干渉も受ける必要など無い。なぜ今国がそれを破ろうとしているのか・・・。」と述べました。戦争の恐ろしさを身を持って知る人間の言葉です。彼は、暴力は社会を変えない。と強く訴えました。
 この日の講演会には、同志社大学の学生以外にも、ベトナム人を家族に持つ方や、新聞記者、他に多くの一般の方々も訪れました。それぞれが講演に感銘を受け、講演会終了後には、ネルソン氏に握手とサインを求める列ができたのです。
 以下にこの講演会の内容を記します。ただし、ネルソン氏の講演会の内容をそのまま記録した本が他に数冊あるため、今回の講演会で新たに加えられたと思われる内容と、質疑応答のみを掲載します。ネルソン氏の講演会の基本的な内容を載せている、『元米海兵隊員の語る戦争と平和』や『To End the Misery of War Forever ~No Reconciliation, No Peace~ アレン・ネルソンの「戦争論」III 』などを参照しつつ御覧になって下さい。

ネルソン氏講演会(抜粋)

@ アメリカは自らをキリスト教国と称しているわけでありますが、真のキリスト教徒であるならば、原爆を投下したりは致しません。あるいは、原住民を鎖につないで拉致するというような行為はしないはずです。ブッシュ大統領は自らキリスト教徒であると言っていますね。日曜ごとに教会に礼拝に行っている姿が映し出されるわけです。手にはバイブルを持っています。しかし果たして彼は、バイブルを開いて読んだのでしょうか。

A アメリカ軍隊はみなさんを守るために駐留しているのではありません。日本国の政府をコントロールするためにいるわけであります。そのような日本国は決して真の民主国家とは言えないわけであります。日本政府はいわば傀儡政権であります。日本政府はアメリカの言いなりになっているわけであります。
 事実はどうでしょうか、日本国はアメリカ軍に占領されている、被占領国だと言わなければなりません。こんなこと申し上げても皆さんはすぐにそうだとは同意しにくいかもしれませんね。皆さん方の前にはアメリカ軍はあまり姿を現しません。しかし、沖縄の人にとってはそうじゃありません。日々アメリカ軍を目の当たりにして、自らが、占領されている状態を実感しているわけです。
 日本国首相は首相の名に値しないですね。アメリカ合衆国日本州の州知事と言わなければなりません。皆さん方の国には大統領が君臨しています。ジョージブッシュ氏であります。皆さん方何か要求ごとがあっても、東京の国会に行っても無駄であります。日本の国会は無力であります。直接アメリカの首都ワシントンまで出かけて下さい。

B アメリカの有り余る富は戦争や暴力に使用できるわけであります。核兵器を含む大量破壊兵器を作る為に、富はあるわけです。しかしこういうホームレスの貧しい人の為に、住宅を作ったり、就職の機会を与えるお金はないというわけですね。

C 裕福な家庭の若者たちが軍隊に入る事は絶対に無いわけですね。つまり彼らは、海外留学をしたり、有名大学を経て、有力な就職口を得るということです。
 ブッシュ大統領は、テロとの戦いは何にも増して重要な課題だと言ったわけですね。しかし、彼がイラクに派遣したのは、自分の子供ではありません。よそ様の若者を派遣して人を殺させ、そして場合によっては命を落とさせているわけであります。ブッシュ大統領には二人の年頃の娘さんがいるわけですね。しかしこの二人が軍隊に入ること、あるいはイラクに行くことは、ついに無いのであります。
 日本の前首相、小泉さんもいち早くブッシュの戦争に賛成をして、自衛隊をイラクに派遣したわけです。しかし、彼はよそ様の若者達を戦場に派遣したわけであります。自らの息子を、戦場に派遣したわけではありません。小泉さんの息子さんはのうのうと東京で暮らしているわけですね。息子さんがテレビに登場して、ビール会社の宣伝をしているところも見たことがあります。
 かくして、戦場で殺し合いをしなければならない若者は、いずれの国においても貧しい者同士と言う事になるわけです。

D 皆さん方イラク戦争の中でも、マスメディアが様々な歪んだ報道をするものですから、兵士の任務について誤解をしている向きがあると思います。兵士は何もソーシャルワーカーとして戦場に出かけるわけではありません。戦場で見つけたおばあさんを助けるために行っているのではありません。子供たちにキャンディーを与えるためでもありません。病院や学校建設、これもうそっぱちであります。”殺す”ために行っているわけであります。

E 第九条を持つ国に生まれた幸せを本当に皆さんに自覚して欲しいと思いますね。というのも、いわゆる大国の子供たちは全て、戦争を知っております。大国、アメリカの子供達はもちろん、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、中国、韓国、これらの国の子供たちはいずれも戦争を知っているわけですね。一人、第九条を持つ日本の皆さん方は、九条のお陰で、戦争の苦痛や恐怖から逃れているわけです。
 しかし既にご存知のように、安部首相は、憲法第九条を取っ払うことを自らの課題にしているわけであります。皆さん学生は、日本国民の皆さんは、これを許してはいけません。
 皆さん方は第九条によって守られてきた。今こそ日本の学生たちが、若者が、立ち上がって声を大にして、第九条を守るべき時であります。

質疑応答

1.Q. こんにちは。社会学部メディア学科の3回生の戸田菜津子と申します。憲法9条のことを素晴らしい憲法だと言っていただいて、私達も日本の憲法に誇りを持てると思いましたが、今憲法9条があることで、日本の海外協力が制限されています。例えばイラク戦争に行っても戦えないといったものです。そういった制限のため、日本はお金だけ払っているという批判を受ける事があるのですが、日本の憲法は、世界から見て、そういう批判があても、本当に評価されているのでしょうか。


  A. 私は日本政府がお金だけを送って、兵士を送らなかったという批判や、日本政府が軍隊と十分なお金を送るべきだという圧力があったということを聞きました。しかし、実際、あなた方の憲法はお金や軍隊を送ることを禁止しています。そして、他の国々は、あなた方の憲法を、世界中でその国の憲法が尊重されているのと同様に、尊重するべきです。アメリカ合衆国は、決して他の国に、アメリカは銃社会を脱するべきだとは言わせません。そして私たちの憲法は銃を持つ権利を・・・します。私達はそれを変えたい。だから私は日本の政府は戦争へ行く事を禁止する憲法に従わないことで、大変大きな間違いを犯していると思うのです。だから、アメリカ人の私にとって、政府が法律を破るというのは大変興味深い事です。その憲法はその国の最高法規であります。日本の市民であるあなたたちは、法律に従い、税金を払い、子供の世話をし、自分の世話をします。しかしその政府が日本国憲法第9条に従わないことで、断続的に憲法に違反しているのです。

2.Q. 同志社のアメ研の学生で、今事例研究でブラックパンサー、黒豹党とも呼ばれているんですけども、昭和44年に、パンサーが代表で来て、来日旅行をしたことを今研究していて、そういう日米交流の中で、アフリカ系アメリカ人の人たちが、日本に与えて下さったことはすごく重要だと思うんですけども、ネルソンさんも、その伝統の中のお1人だと思うんですが、いかがですか、という質問をさせていただきました。

  A. 質問ありがとうございます。とても興味深い質問です、なぜなら私はブラックパンサーと彼らが達成しようとしていたことをとてもよく覚えているからです。私が思うに、彼らと私の違いは、私は社会を変える方法として、暴力を信用しないという点です。私は、ベトナムで、暴力が私たちに平和をもたらさず、さらに多くの憎しみだけをもたらすということを・・・。だから私はガンディーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアのような伝統を好みます。私は暴力ではなく、力を信じます。だから、あなたがこの二人の男の歴史を見る時、マハトマ・ガンディーは今でも居座っているのですが、イギリスを彼の国から追い出すのに非暴力でした。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに関しても同様です。彼は暴力を用いずにアメリカをより良い国にしたのです。それゆえ、私は非暴力を我々の世界を変える方法として信用します。それはもっとずっと生産的で、暴力よりも力強いのです。暴力は更なる暴力だけを生み出します。だから私はブラック・パンサーのその哲学には反対です。

3.Q. どうも。経済学部3回生の清水と申します。感想なんですけども、やっぱり、言葉も出ないほどショックを受ける話で、すごく興味深く聞かせていただきました。質問なんですが、僕の友達のアメリカ人が、今年の2月にアメリカの海兵隊に志願して、今年の12月からイラクに2年間行くんですけども、そこで、彼の在隊中、もしくは除隊後、僕は彼に対してどういう事ができるのか、僕はどう彼に接していけば良いのかという事についてアレン氏の意見をお聞きしたいなと思ったんですが、どうでしょうか。

  A. これもとても興味深い質問ですね、私は他に行く場所がないために軍隊に入らなければならないアメリカの貧しい子供たちと働いてきたので。彼はあなたの友人なのだから、私の意見としては、あなたは彼を支えてあげるべきです、彼に手紙を書き、あなたが彼を心配していること、生きて帰ってくること、人を殺さないようにすることを伝えてあげて下さい。

4.Q. まずネルソンさんに感謝したいのですが、今初めてベトナム戦争の元兵士のことを聞いたのですが、私が感動したことは、たくさんの戦争映画を見て、本当にこうだったなあと思われて、いつも思い出される事は戦争の臭いとい」う事です。私の質問は、ベトナム戦争の元兵士の世代の大部分は、PTSDの病気があって精神的に苦しんでいますよね、ネルソンさんはどうやってそのことを乗り越える事ができるのでしょうか?講演会をやることによって乗り越える事ができたのですか?他のベトナム戦争の元兵士たちはどうやってそれに対処しようとしているのでしょうか?

  A. 戦争体験を話せるようになるには、セラピーを受けて、・・・しなければなりません。セラピーを受けている時間は長く、痛みを伴います。なぜならあなたは自分がしてしまったことに向き合って、責任をとらなければならないからです。だから私たちはベトナム戦争のトラウマを乗り越えるため元兵士用の学校を建てたり、今でもセラピーにいたりするのです。アメリカの全男性ホームレスの80パーセントはveteranです。軍隊に入れられて、戦争に行った人々なのです。それは大変やっかいな病気です。私はセラピーを受けておらず、問題を抱えているある海兵と一緒に講演会をしたことを覚えています。彼が話す番になった時、彼は子供に話し始め、そしてすぐに部屋から逃げ出してしまったのです。彼は行ってしまいした。彼はそこにいれなかったのです。彼のような人は一生懸命頑張らねばならず、家族や友人からの多くの支えも必要です。これは大変難しいものです。私にとって、このように講演をすることは、ある意味セラピーのようなものでありますが、また他の意味では、そうでもありません。私は講演をすることが好きではないのです。ジャングルに戻りたくないし、赤ん坊が生まれるのも見たくないし、積み重なった死体の話もしたくないのです。しかし、これは私にある責任なのです、なぜなら私は生き残って、それについて話せるからです。つまり、私に、戦争に行ったことのない全人類に「行くな。何も見逃していない。どこであても、生は死より良い、戦争はひどい体験である。」と伝える義務があるのです。
 私たちは59,000人のアメリカ人がベトナムで亡くなり、2,000,000人を超えるベトナム人とカンボジア人が亡くなったことを覚えておかなければなりません。彼らは何が起こったかを語ることはもうできないのです。だから、戦争を生き残った私たちのような者には、語り継ぐ責任があるのです。それはちょうど広島と長崎の原爆を生き延びた人たちと同じです。彼らは語り継がねばなりません、彼らが見たむなしさや、各都市で起こったことを話さなければならないのです。なぜならば、彼らは、他の多くの人と違って、生き残ったからです。

5.Q. 今日は講演をどうもありがとうございました。毎日新聞の記者の谷田と申します。戦争体験者の方の話は結構聞かせていただくのですが、その度にすごく重くて、戦争は悲惨だとか、核兵器は悲惨だとか、言う必要も無いほど、その悲惨さが伝わって来るんですね。ただ、日本では戦争体験者が高齢化していて、一方で核兵器がいつまで経ってもなくならないし、今でも戦争を続けている国はなくならない。その中で、第三者が、第三者に対して、戦争の悲惨さとか平和の重要性を伝えるにはどうしていったら良いのかということを、お聞きしたいと思います。

  A. 日本にとって特に為になるご質問をありがとうございます。なぜなら、第二次世界大戦世代はどんどん年をとり、すぐに彼らはいなくなっていってしまうからです。しかし私は彼らの話を記録する事は大変重要だと思います。つまり、第二次世界大戦を生き、経験した祖父母があなた方にはいますよね。あなたはテープレコーダーを用意し、座って彼らの話をしてもらう必要があるのです。
 そして、皆さんのような学生が自分がどれだけ強い力を持っているのかに気がつくことも大変重要です。あなた方の政府は第二次世界大戦の歴史を洗
い流してしまおうとしています。彼らは小中学生の教科書に嘘を並べています。そしてあなた方学生たちがこれらの子供たちに第二次世界大戦の真実を、彼らの物語りを教えなければならないということを主張しなければなりません。あなた方はこの政府が第二次世界大戦の真実を洗い流してしまうことを許してはいけません。
 私が小学校を訪れて、4、5、6年生と話す時、子供たちは何が起こったか、なぜ起こったかははっきりわかっていませんが、何かが起こったのだ、という感覚を持っています。
 彼らは、過去に起こった全てのことを教えられていないことも感覚でつかむのです。だから大学生が、あなた方のように名声ある大学に通う方々が、自分に責任があることに気づくことがとても大切なのです。しかし、それは同時に、あなたは自分の国をより良くする責任がある事も意味します。子供たちを教育して、第二次世界大戦で起こった真実を知らせるのです。
 皆さんは第二次世界大戦で起こったことに罪悪感を持つべきではありません。しかし、第二次世界大戦で、日本の帝国主義によって傷ついた民族と和解する責任はあなたたちにあります。
 例えば、数年前、私は中国を訪れた一人の日本人の女の子を覚えています。中国の人々は彼女を行く先々で歓迎しませんでした。彼女はなぜかわからなかったのです。つまり、彼女はもちろん戦時中日本が中国にいたことは知っていたが、日本人が中国人に対して何をしたのかを全く知らなかったのです。だから彼女の気持ちは傷つき、彼女がこのように扱われたことに本当に気分を悪くしました。これが、真実が伝えられなければならない理由です。なぜなら彼女がもし正確に中国で起こったこと、日本の帝国兵士がしたことを知っていれば、彼女は中国の人々の痛みや、なぜ彼らが彼女をあのように扱ったのかを理解できるからです。
 だから私は空襲を生き延びた人の話や、兵士が戦争に行って帰国する話などの真実は子供の教科書に載るべきだと信じます。
 私には多くの第二次世界大戦中の日本兵士の友人がいることをあなた方に伝えます。彼らは今80代や90代です。これらの友人は、中国やビルマなど多くの場所へ行き、たくさんのことを行いました。そしてたくさんの恐怖を見ました。彼らは今も戦争後遺症に悩まされています。彼らは家族に話す事ができません。話したいけれど、この後遺症が決してそれについて話させてくれないのです。そして彼らが戦争から帰ってきた時、助けは何もなかったのです。日本は立ち直ろうとしていました。今までずっと、彼らは苦しみ続けています。彼らの話は話される必要があります。私は、日本政府が断続的にどうにかして真実を隠そうとしていることに、ただただ驚いています。
 もしあなたが慰安婦であって、今は70代か80代であるのなら、そして日本の首相が日本の帝国軍隊のこれらの女性の連行、奴隷として扱ったことへの関与を全否定するのなら、あなたにもどれだけそれが痛みを与えることか想像できるでしょう。もしあなたが沖縄の人々で、全日本軍は集団自決を命令、推奨していないと言って嘘をついて教科書を変えられたとしたらどうでしょう。そしてあなたは実際沖縄に戦時中いて、命令が伝えられ、それに従い自決をする家族たちを見聞きしていたらどうでしょう。どれだけ辛いか想像できるでしょう。こういった事は、教科書に載るべきなのです、そしてこの政府は断続的に第二次世界大戦で起こった野蛮なできごとを隠そうとしていることを恥じなければならない。

6.Q. お話ありがとうございます。新聞学部の四回生の三沢と申します。非常にお話を聞いていて感動して、涙を流しながら聞かせてもらいました。僕は色んな惨事を聞いたことがあります。様々なメディアから、どこどこで二十人が死にました。イラクに行って何十人が死にました、と聞くのですが、そういったものを聞いて考えていても、僕には実感が湧いて来ないんです。だから、こうしてネルソンさんのお話を聞かせてもらって、良い考えるきっかけをもらいました。今度は、考えるだけでなく、本当に見て何かを感じたいと思うのです。戦争を体験することはできないのですが、僕たちに、こういった事や、マスコミに隠されているような事を、どこかで実際に見て感じる機会や環境があるならばそれをお聞かせ願いたいと思います。

  A. それは私達みんな問題に思っています。新聞を三紙読んでいます。そして、もし家にいれば、インターネットでできる限りの情報を集めます。なぜなら私はメディアはとても偏っていることに気がついたからです。私たちにはfree pressはありません。私たちの国の新聞社は、大企業に所有されており、企業は私たち市民に真実を伝えることに興味はありません。
 これは大きな問題です。アメリカで、平和活動家や多くの人が私に、「日本に平和運動はあるのですか?」と聞きます。なぜならアメリカのメディアは日本市民が平和的に基地とその周辺で起こる暴力に対して抗議する姿を流さないからです。もちろん日本のメディアも沖縄で起こっていることを放送しません。沖縄では、何年も行われている抗議運動があるのです。多くの沖縄の人々は、反対して、議論を呼んでいるヘリポートの建設をやめさせようと努力しています。12歳の女児のレイプ事件の後、軍隊や日本政府は基地を取り除くと言いました。しかし、それを取り除く代わりに、彼らはその基地を日本の他の地域に移動させるのです。そしてまた新たに抗議が起こっています。しかし多くの日本人はこの抗議を夕方のニュースで見ることはありません。 だから、私たちは、真実を探すために、自分たちでリサーチをする必要があります。なぜなら、今晩のこの大学での講演会でさえです。これは重要な講演会です。私はアメリカ人で、日本人の学生たちに話すために、アメリカからやって来ているのです。しかしCNNはここにはいません、そして来る予定もありません。なぜなら彼らはアメリカの人々にあなた方の声を聞いてほしくないからです。彼らはアメリカ人に、日本人はここであなた方を守っている基地を喜ばしく思っていると信じていて欲しいのです。だから私たちは最終的にインターネットを使わなければならないかもしれません。私たちは自分の読むものをダブルチェックしなければなりません。新聞の中の何かを読んで、それが真実だとすぐに信じてはいけません。
 今晩ここにいる日本市民の皆さんの中で、ベトナム戦争中に大学生だった人は、ベトナム戦争中にメディアが死体や燃やされる村人、女子供の死体を映し出したことを知っているでしょう。しかし今回のイラク戦争は、きれいな戦争です。彼らが見せるものは全て、燃えた車の残骸です。あなた方は死体を全く見ません。あなた方は苦しみを見ません。だから多くの市民が戦争が進行中であることを本当にわかっていないのです。(了)

(浅野ゼミ3回生・戸田菜津子)

最終掲載日:2007年12月25日
先頭へHOME新着情報
Copyright © 1997-2006  Prof. Asano Kenichi Seminar All Right Reserved.