Asano Seminar:Doshisha University
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記録
霍見芳浩教授講演会

「明日の日本を今のブッシュ米国にしないために」
2006年7月6日午前10:45
同志社大学臨光館205番教室にて
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 霍見芳浩(つるみ・よしひろ)氏略歴

 1935年熊本県生まれ。1958年慶応交換留学生として米国スタンフォード大学留学。1960年慶應義塾大学経済学部卒業。同大学院、助手を経て、米国ハーバード大学で経営学修士号(MBA)、さらに1968年、日本人として初めて経営学博士号(DBA)を取得。その後、ハーバード大学、コロンビア大学、カリフォルニア大学などの教授を経て、現職。太平洋経済研究所理事長。『脱日本のすすめ』『日本企業繁栄の条件』『日本再活論』『脱・大不況』『日本の再興』『アメリカのゆくえ、日本のゆくえ』など著書多数。

 霍見さんは、ハーバード大学経営大学院の教授時代、ビジネス・スクール(MBA)コースにいたブッシュ現大統領を教えた。米メディアの功罪についても詳しい。

以下は講演会の記録である。

 講演編

 日本の、格差社会が小泉さんの様々な政策により広がっています。経済の場合では、小泉竹中政策ですが、日本でも格差社会が出てきております。これは、ブッシュ米国を追いかけているわけです。このままいけば、そういう風になりますよということです。

 ブッシュ帝国主義。これはご存知のようにイラク戦争だ占領だのと、それを小泉さんは全て追認をしているわけです。追認どころか全てを捧げますと約束しているわけです。実際に、そういう言葉を使って2001年9月11日のテロ攻撃の後、小泉さんは、米国にすっとんできたのは良いのですけれども、記者団から、「お前どのくらい援助費を出すんだ。どういうことをするんだ」と突っ込まれたときに、「できる範囲内で」と言っておくのが、外交辞令であり、一国の総理であればそのくらいのことを言わないとダメなんですね。

 しかし、小泉さんは、日本語でも英語でも、英語は全然知らないですが、自分では知っているつもりですが、あの人は英語でも、日本語でもワンフレーズですが、ワンフレーズしか頭が働かないんです。想像力も分析力もないんで。何か日本のメディアは今までの日本の政治家はぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言語不明、意味不明というような人ばかりであったから、小泉ワンフレーズを非常に新鮮に聞こえると持ち上げている。しかし、外交には、かえってごちゃごちゃの方が良いわけです。あとで逃げる可能性があるために。記者団から英語で突っ込まれた時に、仮に英語が完璧にできたとしても、そういう時は日本語を使うべきです。その間考えることができるわけです。例えば、私が公式会談に臨むとすれば日本語を使います。英語に全然不自由はしませんけれど。なぜかというと、あとで通訳の誤りだと逃げることもあるし、間違いだと言うこともできる。国のリーダーであれば、また、公式の記者会見とかなんとかいう場合には、語学が仮にできたとしても、できればできるほど、通訳つきのコミュニュケーションをすることが戦略的です。

 小泉さんは、その反対なわけです。自分は英語がわかっているつもりでいるから。それでワンフレーズでどういうことをやるのかと言うと“great”。頭の中にあるわけです。“great”“Impressive”。どういうことをやるんだと聞くと“everything”。記者団は驚いた。本人はできるだけいっぱいのことをやるつもりなんだけれども、ワンフレーズで英語で“everything”と言えば、女性が男性に全てを捧げますとという意味なんです。だから、記者団もブッシュも隣で苦笑しているわけです。

 今日出た「週刊金曜日」に、このあいだのブッシュ小泉会談について、外ではこのように見られているのだということを、検証して書きました。日本では、また外務省と側近により、「大成功、日米関係緊密化」、「蜜月時代の再確認・親友」。冗談じゃありません。バカかと言われたわけです。なぜかと言ったら、小泉訪米はスケジュール上は2つのことがあったわけです。表向きは、首脳会談。これが目玉であるはず。ところが、そっちは完全に無視されました。ニュースの価値なしと知っていますから。あの2人が今頃会って、2人で話し合うべきことはたくさんあるのに、そんなことができる2人ではないと。色々言うのは、玉虫色の世論操作のためにあるんだけれども、それに乗ってはいけないと、米国のジャーナリストの最後の良識ですから、無視。小泉さんが米国に来たということですらも報道しないところが圧倒的に多かった。報道したとしても、ベタ記事で、また訪ねてきたというレベルの話。ですから、共同声明の文、共同首脳会談、いわゆる政治・経済、大きなスケジュールであったプログラムは完全に無視。そのぶん、何を、どれを大々的に取り上げたかというと、この忙しい時に、ブッシュが案内役を務めて、エルビス・プレスリーのところに遠足。2人そろって。それに驚いたわけですね。小泉だけ行かせるのも驚くわけだけれども、よそから来た首脳が今頃、帰りに、ワシントンで使った時間よりも、もっと長い時間を、そのプレスリー訪問に使い、プレスリーの真似をする。こんな首相ってどういうものだろうか?という目で見たときに、大統領が、俺が率先して案内すると言ったものだから、2人そろって珍道中という切り口でマスメディアは見ていたわけです。    

 講演の光景©浅野ゼミ
 “Love me tender”をやりましたけれども、「えらいアレが記者団に受けて」と日本のメディアははしゃいだ。しかし、これも全然ナンセンスです。実際記者団に、“Love me tender” と彼が歌った時には、それは確かに米人記者団は、どっと笑いましたが、その複線を知らないんです。総理の側近に、それを振付ける人もいないし、日本から来た同行記者ももちろんのこと、米国に来ている人も複線の意味を知らないんです。皆さんは例外中の例外だと思うけれども、小泉さんも含めて、プレスリーの歌声を真似してもじって、“Love me tender” というと、愛するのloveの LがRになっちゃうんです。“rub”(こする)になっちゃうんです。ですから、1930年代以来、日本人の猿真似のジョークで米国人の間でよく使われているわけです。

 自分では“Love me tender”と言っているつもりですけれども、向こうの人が聞けば、「いいところを優しくさすってちょうだい」という意味になるわけです。非常に、ひわいな言葉。そう出るよ出るよと思っていたところに、彼が“Rub me tender”とやったもんだから、それきたっと言うわけで記者団はどっと湧いたわけです。ところが、小泉さんも、同行記者も、それで大いにユーモアが受けたと考えていますが。

 その後のもっとひどい“I need you”などは惨憺たるもの。そのことは週刊金曜日の今日出た号に書いております。何故、週刊金曜日に私が書き始めているのかと言いますと、米国にも、“The Nation”とか“ The New Republic”というこの程度の薄さの雑誌があって、市民派教養人はもちろんのこと、保守的な人でも、中道保守派の人々の教養誌と、いわゆるマスメディアが大きく取り上げないが、大きな問題点を読むものとなっています。当然、議会のスタッフ・議員、ブッシュは読みませんけれども、共和党の中でも中道派の人間、自分の批判者のことをよく知らなければなりませんから、為政者であれば、読むべきものです。日本では、そういう雑誌がないので、唯一、週刊金曜日がそれに匹適するかと思います。昨日、おとといと民主党議員の勉強会をやった時に、またこれ全部配って、「お前らこれ必修だぞ」と。週刊金曜日は、米国での教養雑誌。教養のある人間であれば、為政者、学者、ジャーナリストはもちろんのこと、市民というのも、“The New Republic”、“The Nation”、せめて名前だけは知っています。どういう雑誌なのかということも。それを定期的に購読している。それに広告に頼らない。ということで、購読中心となるわけです。広告で載っていたとしても、ちょっとした本の広告など。というのが、日本でもあるのですが。今の米国を真似して欲しいところは、例えば、“The Nation” 、“The New Republic”みたいなものが、かなり読まれている。それは何百万とは出ないが、少なくとも、オピニオンリーダー、ビジネスマンを含めてかなり読まれる。これはやっぱり、日米の教養がどうだこうだと言いたくなりますけれども、残念ながら民主化度という意味での教養度という面では日本はまだ数歩遅れています。

 それで、早速、本題に入りますが、今、世界がどのように動いているのかということを押さえないと、どうして、小泉さんが、ああいう“Rub me tender”みたいなナンセンスなことをするのか、ある意味では、無邪気なエラーなんだけれども、それが日本のイメージになり、日本の品格を下げた。品格を下げますと、世界はイメージで動いていますから、こういう人と取引して良いのかどうか。話し合って良いのだろうか、問題がわかっている人なのだろうか、ということで動いていますから、もうこういう日本というのは、しょうがないよということになって、結果的には日本人の暮らし向けに響いてきます。

 日本人の安全保障というものは、ドンパチの戦争のことばかり書いていますけど、そうじゃありません。安全保障というものは、そこの国の国民の暮らしを守ることなんです。為政者の第一の責任です。それはただ軍備だとかだけの問題ではありません。民主的な社会の生活の仕方。それで私としては、皆さんにお配りしたプリントにあるように安全保障の4大柱という形で4つの円グラフを示しております。なぜ、円グラフにしているかと言うと、少なくともこの4つの分野がきっちりと整合的にあわせてきっちりとバランスをとらないことには、緻密な安全保障はできないわけです。軍備だけ突出していてもダメなわけで、当然外交はその中に入ります。また、国内治安をやるために下手すると、ブッシュも小泉さんも共謀罪がどうかということで一生懸命見ているんですが、警察国家になってしまう。これは、一般の国民の暮らしを守ることにはなりません。ですから、やっぱりお互いに制約条件にない、この4分野の相乗効果を高めるようにもっていくのが、いわゆるリーダーの責任です。その1つがジャーナリズムです。というのも国民の大半は、マスメディアに頼りいろいろな啓蒙情報を得るわけですから。残念ながら日本のジャーナリズムは細々と生きている状態にあり、大マスメディアからは消えています。マスメディア商売はありますけれども。ですから、選挙の時でも小泉視察劇場なんていうものをみんな、わいわいがやがややるようなことは、やるけれども、何が問題なのかということは一向に示してくれない。これは、日本の悲劇なわけです。それで、世界はどのように動いているのかということなんですけれども、これだけ押さえておいて下さい。

 21世紀。21世紀の始まりはカレンダーでは2001年の1月1日ですが、世界の政治・経済・技術等々はカレンダーでは動きません。いわゆる21世紀型の構造、情報社会型というものが始まった大きなシンボルとなった出来事は、私は1989年11月9日の東西ベルリンの壁の崩壊だと言ってきています。ベルリンの壁の崩壊というのは、いわゆる20世紀型の重工業中心の社会が崩れて、横の連絡型のいわゆるネットワーク型の経済技術が産まれた。そうすると、ソ連というのは、重化学工業の縦割りの20世紀型では、ほとんど上手くいっていたわけです。しかし21世紀には問わないと。ゴルバチョフさんが、もう辞めた、と共産主義体制のそれこそ大リストラを始めるわけです。ゴルバヂョフさんがあの時点で旧ソ連の書記長になったということは、世界史の観点から見て、偶然ですけれども、非常に、我々もその恩恵を受けているわけです。

 なぜかというと、それまでのおじいさんたちの、いわゆる西洋に対して猜疑心を持っている人々が、年功序列で色々やっていたわけです。彼等がある意味で上手い具合に早死にしてくれたわけです。予定以上に。それでゴルバチョフさんで、西洋社会に対するコンプレックスのない世界観を持った人が、たまたまああいう職について、旧共産主義体制では、もうダメと、このままでは潰れると、いうことで民主化、つまり共産主義を止めるということをやったわけです。だから、悪い人が早く死ぬというのは、1つの良いことなんです。日本でも山形有朋というしょうもない人が長生きをして、彼がついに死んだ時に、石橋湛山が、「死もまた奉仕なり」ということを言っているわけで、小泉さんに送りたい言葉です。

 通信システム、交通システム、運輸手段システム、それからエネルギーシステムがどう動くのかということから皆さんも押さえてください。世界の環境がどうだと言うときには、ここから押さえていかなければなりません。21世紀はあくまでも、19・20世紀は他のいわゆる炭素エネルギーをベースにした仕組みでは間に合わなくなって、色々な混合になりますけれども、例えばデジタル型と言われています。いずれにしても、石油・天然ガス、特に石油の世界の総産質量は2020年、あと15、6年でピークに達します。ご存知のように、インド・中国を含めて、新興国がものすごくエネルギーを使い始めています。ブッシュとしては、エネルギーいわゆる石油エネルギーの供給が少なくとも押さえられる。そうなると世界の第2の埋蔵量を持っているイラク、その石油をサダム・フセインが押さえているということが、ブッシュの視点から見ればとても耐えられないことです。ですから、でっちあげをしてでも、イラクを占領して石油を取る、いわゆるイラクの「石油つき沖縄化」と当時から私は警告してきたわけですが、ブッシュはそのことを大統領就任以来、ずっと狙っていたわけです。

 そこで、生じたのが2001年9月11日のテロ攻撃。テロはサダム・フセインがやったのではありません。テロをやったとされるアルカイダグループとサダム・フセインは犬猿の仲でした。しかし、ブッシュにとっては、そのようなことは関係がない。たいていの米国人は知りませんから、あの裏にサダム・フセインありということにした。しかもサダム・フセインが大量の化学兵器を持っている。原子爆弾も後3ヶ月ぐらいで持ちそうだと。そんなことになったら、テログループに大量破壊兵器が渡ったら大変なことになるから、今のうちにということを言うと、米国人も、真珠湾攻撃を受けた後のアメリカ国民と似たような感情で激昂していて、「それやっつけろ!!」と報復感情に燃えていたし、世界の同情心もあったわけです。それを利用して、タリバンがいたアフガニスタンなんていうものは、もうほどほどにして、イラクに突っ込んでいく準備を、その日の午後から会議をはじめている。このチャンスを利用していかに、イラクに突っ込んでいくかと。大量破壊兵器があるとか、国際テロの後ろ盾なんていうものは、ブッシュグループは自分たちでは信じているわけではない。国民を騙す為には、どういう風な大きな嘘をつけば良いのかと。嘘も本気でつけば真実になるというのは吉田茂やヒトラーなど、各煽動政治家がよくします。ブッシュグループも、それについていく。まともに信じたのは小泉さんだけ。世界の首脳の中で今も信じているのは小泉さんだけ。ブッシュが何故小泉さんを歓迎したかというといろいろありますが、小泉さん以外は、今もブッシュと仲の良いところを見せたら、自分の国での政治的リーダーシップを傷つけることになると皆思っているわけです。ブレアですら思っている。なのに小泉さんだけしがみついている。ブッシュとしては、わざわざ来て親友の演技をしてくれて、やってくれるのは小泉しかいないというわけなんで、大歓迎のジェスチャーをした。残念なことです。しかも、それも知らずに、“Rub me tender”をやる。あんなのは、総理をお辞めになってから、国民の税金を使うんじゃなくて、自分のお金で観光者としてウエイスランド?に行って、真似しても良いのですが、一国の首脳が相手の国を訪れた時に、少なくとも訪ねるべきようなところではありません。

 こういう世界の大変動の時代なわけです。大変動の時代の時こそ戦略関係が必要なんですね。戦略関係が必要というのは、今までのパターンを通すのではダメ。自分で変更を決めないと相手に利用されるよという時代。そうすると、そういうのには戦略関係が必要なわけですが、日本に戦略思想があったのは、明治維新から日露戦争まで。それ以外の時代には戦略思想がありません。戦後はただ米国をモデルにして追いつき、追い越せと方向が決まっている。こんな時には戦略は邪魔です。戦略こそ、先行き自分としてどうしたら良いのかというのがわからない時、また下手すると皆に利用されてしまうという時に自分の進むべき道。それから、一人ではダメだからどこと組んで、一緒にやっていくかという連携の共生の考え方が必要です。そのためには、歴史感覚が必要です。また、国際感覚、世界がどのように動いているのか、国と国とがどのように動いているのか。なぜ金正日が、ああいうことをするのかという、きちんとした自分なりの検証。また社会正義感がないとダメです。そうでないと、政治家は勝手に歴史や国際関係を曲げて、自分だけの欲望の達成に使います。日本は残念ながら世界で、忘年会をする唯一の民族なんですね。一年ごとに忘れているわけだから、歴史感覚なんて育ちようがない。自分が勝手に忘れてしまっている。都合の悪いことを忘れるのは、どこの国でもそうですが、特に日本では、都合の悪いことは自ら全部忘れていってしまう。そうすると、相手も忘れてくれているだろうと思うところが日本人のおめでたいところ。相手は日本が忘れていると思うから、ますます、語りついで先鋭化?していきます。殴られた人間というのは、その痛みはいつまでも忘れません。殴った人間が悪かった、いつまでも忘れないという具合になって、初めて殴られた人間が、そのうち忘れはしないけれども、許しましょうというところでバランスがとれるわけです。殴った方が勝手に忘れておいて、もうお前も忘れろというのは、相手はますます語りついでいく。これが世の中の世界のルールなわけです。「日本の常識が世界の非常識」と言い始めて私は長いのですが、その典型です。小泉さんは、それを国策まで持ち上げていってしまったから、日本というのは、てんでおかしくなってしまった。

 21世紀。世界の6大衝撃。大変動の時代と言いましたけれども、どういうショックがあるかというところから皆さん考えなければならない。そのショックがどう相乗効果を表すか。例えば、ブッシュ帝国主義の対外膨張と米国民主主義の破壊。そして米ドル支配の終焉。というのが世界の政治・経済構造への大きなショックの1つです。私は2000年にこれを作りあげ、ブッシュが大統領になるという頃に、世界が今後どうなるのか。ブッシュが大統領になると、こういうブッシュ帝国主義なことをやっていく。その結果は、残念ながら当たったと言わざるを得ないのですが。それから中東ロシア・中国・北朝鮮の内部不安定と対外膨張。どこの国の政治家でも自国内の内部が不安定になると、対外膨張で国民の反対をそらす。それから3つ目、日本の政治と経済の硬直化による太平洋経済の低迷。これは世界の足を引っ張ることになります。4つめ、自然環境破壊。特に地球温暖化。自然環境破壊による構造的気候不順。構造的気候不順は当然、農業を痛めます。これまでの農業というのは、これまでの気候体系と、生態系で成り立っているわけで、それが崩れてきますから、完全に農業ができなくなり、食料に影響します。それから、石油・天然ガス・炭素エネルギーの産出量減少と、次世代のエネルギーシステムの移行の障害。また、世界的人口爆発。日本以外人口爆発なんです。ですから、日本にいると、どうも人口が減っている少子化だとか言うけれども、それは日本国内だけの話なんです。日本から一歩出れば人口大爆発です。人口大爆発とエネルギー不足と食料不足と3つ組みあわせただけでも、大変な世界の色々な資源の取り合いから始まって、大変な問題になります。

 北朝鮮は私の見方では、何故核をと言いますけれども、核を持っていることを見せておかないと誰も相手にしてくれないわけです。サダム・フセインがいたイラクなどは石油を持っているものだから、皆相手にして、取引したい、取引しなきゃと言うけれども、残念ながら北朝鮮は北朝鮮の立場から見ると何もない。ならば核ぐらい作ってやろう。これは第一次湾岸戦争の時に身にしみて知ったわけです。俺たちには何もない。ならば、核でもやって、あるよあるよとチラチラ時々見せておかないと。核をそういうおどかしと言うよりも、取引材料にしている。外交というものは全て取引ですから、こっちをある程度相手にしてくれと。北朝鮮が求めているのは、米朝直接交渉。ブッシュとしては、北朝鮮の脅威をあおることで日本を自分にひきつけて、イラクへの人・者・金を全て出させる。日本ももし北朝鮮が暴発したらお世話になるかも知れないから、しかたがないやなあ〜なんて言うことで。非常に便利ですから。米朝直接交渉、外交交渉での解決しかありません。もちろん軍事解決なんてありません。一番損するのは、韓国だし、日本なわけです。ある問題がでた時には、この解決方法はだめ、何をして良いのかわからないけれど、この解決方法はダメだとわかったら違う方法を探れば良いんですけれども、北朝鮮の核とミサイルの脅威を除く問題には軍事的解決はありません。いかに使わせないかが問題です。持たせないというのは不可能です。持ってくれるなと言うのは、あったとしても、持たせないのは不可能なのです。そういうことを知っているからミサイル射った後も、韓国の人々の政治家を含めての反応はいかにもクールです。日本だけが、きゃっきゃきゃっきゃして、ブッシュもそれをあおっているわけです。いずれにしても、世界は大激動の時代にある。

 今のアメリカ、今のブッシュ、ブッシュの米国。米国大統領選挙の州ごとの陣取りです。州ごとに代議員が割り当てられた。赤い州は2004年の大統領選挙で共和党のブッシュがマジョリティーを取ったところ。一票でも多くとれば、そこの州の代議員を全取りするという、あんまり良い仕組みではないけれども、そういう仕組みなわけです。ブルーはケリーが取ったところ。地理的には赤いところが多いわけですけれども、このへんは牛の数の方が人口より多いわけですから、ブルーの方が多いです。人口比で言いますと、米国は真っ二つに分かれていると思ってください。日本が明治維新以降、時には米国にお世話になり、良いところを習おうとした、戦後の米国を含めて全てブルーの州の例です。企業のモデルも、教育のモデルも。北海道に農学を植えつけたウイリアム・クラークも。マサチューセッツのアムハースト農学校からきているわけです。ですから、日本人のイメージはブルーの米国。いわゆる寛容でユダヤ・キリスト信教で、忍耐寛容。司馬遼太郎さんに言わせると、一見、精神的武士道と他人の空似のように似ている。個々人の公的な責任をはっきりする。福井さんみたいなのが出ないわけです。自分としてやらなかったとしても、その責任から見れば、責任をとってきちんと辞めるべきです。金融政策を云々されるように、その人の間違いですから。中国のことわざに、「李下に冠を正さず」というのがあります。そういうのが武士道の自分を律するジェントルマンというのは、そういうことなんです。

 米国でいうパーフェクトジェントルマンの一番良い例は、ブラックアウトの停電があって、エレベーターの中に閉じ込められることは、マンハッタン辺りではよくあることなんです。その時にたまたま女性と男性が一緒に2時間ぐらい閉じ込められてしまった。中は真っ暗と。そういう時に助けられた女性が“He was a perfect gentleman”と言う。事実なんです。自分の力に合わせて、やましいことも含めてやれないことはないけれども、誰も見てない。けれども自分の信念としてやるべきこととやるべきでないことで自分を律している。これがジェントルマン。ウイリアム・クラークの話をすると明治の初め、黒田清隆に頼まれて来るんだけれども、黒田清隆、国権的な道徳的な教育をさせたいものだから、校則を押し付けるわけです。ウイリアム・クラークは笑って「こんなので人間は作れん」と言った。そうすると黒田清隆は、お前のルールは何だと問うた。“Gentleman”。日本の明治の初めの、日露戦争までの日本っていうのは、このような開明的な教育でありました。教科書も英米の自由規律を重んじた、個人と規律を重んじた翻訳の教科書を使っていた。これでは困る、と国権派が明治15年ぐらいから国権教育に変えて、忠君愛国だ、道徳だ修身だなんだと持ち込んでやっていたわけです。今、それを日本はまた、やろうとしているわけです。ブルーとレッド、米国は真っ二つに社会的にも政治的にも分かれている。しかし、ブッシュの内外政策の破綻のために、米国の3分の2というのは、イラク戦争では騙された、撤兵すべしという形で行動している。民主党としては、国民に対して、政権交代をしないとこう大きな過ちをおかした国の大変化はできませんと訴えている。日本も政権交代が必要なんです。それが、また悪いと思ったら変えればよい。それが民主主義の原則なんです。

 今年の秋の中間選挙が目玉となっている。少なくとも民主党としては下院議員の1つは奪回してブッシュの暴走をチェックしたい。ブッシュは今政治的に死に体です。ブッシュの支持率は30パーセントぐらい。米国は多様国家ですから、支持率でだいたい50パーセントを割ったらイエローゾーン。日本では15・10パーセントになっていても首相を続ける人がいましたが。40パーセントきったらレッドゾーン。30パーセントきったら死に体です。もう誰も相手にしない。誰にも相手にされないから、小泉とプレスリーの真似をしに行くのはしかたがないなと。それにしても、それがわからずに一生懸命はしゃぎまわる小泉っていうのは、どうなんだと。しかも、それがわからずに大成功だの日本の存在を示しただのなんていうことを一生懸命打電する日本のジャーナリストっていうのは、どういう人間なのかというのが一般の評価です。

 米国でのブッシュのイメージ。中国のことわざに「千語に優る一枚の絵」というものがありますが、小泉も似たように見られているわけです。これは去年の年末のニューズウイークの表紙です。ニューズウイークは“The Nation”、“ The New Republic”よりも保守的な雑誌ですがその表紙。Bush′s World。ブッシュの世界。ガラスのバブルの中に勝手に入って現実から遊離して、ふわふわふわふわ飛んでいるよ。しかもガラスの中に入っているから色々な批判だとか現実も見えない。見えないから一生懸命見ようとしているけれども、こっちからは見えるけれども、向こうはすりガラスで見ることができない、などの色々な風刺をやっているわけです。ましてや彼の性格からしても、悪いニュースは全部俺に伝えるなと側近に言っております。ブッシュは32年前に残念ながら、ハーバードビジネススクールで私の学生の1人でした。私のこれまでの輝ける経歴の中で、唯一の汚点はブッシュを生徒に持ったことです。ですから、彼の性格をよく知っています。人が貧乏なのは、怠け者だからなんていうことを、しゃあしゃあと言っていた人間です。ハーバードビジネススクールの大学院で、ブッシュが27歳の時ですから、もう本当に子どもでした。それから、自分で幻想を作り上げ、それを真実と信じ込んでしまう。小泉さんとまったく同じです。これはまあ普通の人ではない。幻想を真実と思い込んでしまって、それに反対する人間にものすごい敵意を示します。結局、攻撃する時には、嘘も方便どころか、嘘でも何でも使います。今ブッシュグループが私に一生懸命、個人攻撃のうそ八百中傷を仕掛けてきます。そういうブッシュ政策を私は批判しているわけです。その政策が父親のブッシュの性格をまったく反映しているよと米国でどんどん言って回るわけです。それに対してものすごい攻撃がきます。攻撃は嘘八百が多いわけですが、その嘘が例えば、霍見なんていうものはハーバードに行ったこともなければ、まして、ブッシュを教えたこともない。こういう嘘を、少し調べればわかる嘘でも、一般の人はそういうのを聞くと大統領側近がこう言っているのだから、霍見ていうやつはけしからんやつだと。それを聞いた時に、本当かとちょっと自分で検証する人は日本でも少ないわけです。時には検証したい人からe-mailが私にきます。例として申しあげているのは、嘘も方便どころか、嘘を徹底的に使って、それを強弁することによって自我を通していくという仕組みのことです。

 ブッシュの学生時代の写真です。階段教室の一番上で、風船ガムをくちゃくちゃし、うつろな目でぼーっとしていた。
 日米首脳会談。風刺マンガで示すのが一番良いわけですから、ブッシュは向こうでは猿に例えられます。私は猿に対して失礼だといつも言っているのですが。猿は嘘は言わないよと。イラク占領というのはやらないよと。小泉は向こうではポチ。犬に例えられています。これは犬に失礼です。首脳会談と言うけれども、2人が酔って眠りこけてしまっている。責任の問題が何だというのは知らずに2人で夢を見ているというのが風刺漫画です。

 日本のイメージ。これは1989年、スペインの片田舎の小さな新聞で見つけたものです。当時、日本の宇野宗助とかいう総理が、ご存知のように、非常に品の悪い人で、セックススキャンダルがばれた。情報化時代の中では、そういった情報というのはすぐに流れる。何だ日本の総理というのは。日本というのは経済成長で立派な国で道徳的な国だと思ったら、その国の総理がああだっていうので、日本の国旗はこう変えたら良いよという漫画なわけです。スペイン語で新しい日本の国旗のデザインという風に書いています。この日本のイメージは決して消えていません。もっとひどくなっています。

 米国の経済ですが、ブッシュの米国。GDPで計った景気というのは、ある意味良くなっています。しかし、国民の9割の実質所得、暮らし向きを見るとこれが、毎年悪くなっています。GDPが上がっても、ロケットが上がっても、気がついたら国民は全員取り残されていた、という米国での風刺漫画です。これが米国の実態です。格差社会という、GDPが増えても、GDPで飯を食っている、マネーゲームで飯を食っている人間はほんの一部。あとの一般の国民は苦労している。ですから、今のブッシュの米国にしないこと、というのは日本も竹中、小泉政策で、そういう形になりつつあるわけです。そうしては、いけないよと。「格差は経済成長のプラス」などというのはインチキ経営哲学だし、理論だし、歴史的にも理論的も実証されたことがありません。むしろマイナスが実証されていますが。

 資産で飯を食っている人、企業の企業貴族だけは良いのですけれども、勤労所得者。働くことによって、収入を得るほかない人の9割以上の大多数の人間は、税金負担増になっている。ですから、ブッシュの大減税政策。一言でいうと、貧乏人から奪って金持ちに貢ぐ仕組みです。ですから私はこれを“逆さロビンフッド”と言っているわけです。英国の伝説的なロビンフッドというのは、いわゆる金持ちから奪って貧乏人に施してきた。日本は江戸時代にねずみ小僧次郎吉がいたというけれども、いずれにしても逆さねずみ小僧次郎吉です。貧乏人には増税だ。公共料金増額だ。学校への補助金は減らす。こういうのは全て減らしておいて、得た金を金持ちの大幅減税にやる。金持ちの中でもビル・ゲイツなどは、そんなことしなくて良いと。俺はあと2万5千ドルいらないと。そのかわり、俺に2万5千ドルくれるために、貧困家庭の小学校の給食費を削る。その削った分で富裕層の大減税をする必要はないと。大金持ちでもきちんとした社会政見があるビル・ゲイツなどは、そんなのはいらないと。というのは彼らはその信念から言っている他に、そういうことをしていたら社会がバラバラになってしまうと。そうすると結果的に米国の今後の経済成長なり、社会全体の暮らしやすさがなくなってしまうと知っているからです。

 ただ赤いテキサスの大金持ちには、そのような考えはみじんもない。つかみとるだけつかみとる。一般社員の年間平均所得に対して、いわゆる社長や会長だとかの年間所得が何倍になるのかという数字なわけですが、これは歴史的にはだいたい30倍。それで米国国民の中産階級を作り出し、それでもって戦後の経済成長も作り出した。ところが、レーガンが大統領になった81年から、共和党が赤のグループに乗っとられてしまいました。それ以前の共和党は、ブルーの中の穏健ないわゆる保守的な人たちだったわけです。今では、トップの年間所得が一般社員の平均の600倍なわけです。天文学的数字というのはこういうことを言うわけです。

 私はこういうデータを示しながら、こんなことをしていたら米国はバラバラになってくると。しかもブッシュは帝国主義でイラク戦争をする。その戦費は普通なら増税でまかなうべきなんですね。しかし増税でまかなうと皆負担を感じ始めるから、すぐ戦争反対になることを知っていますから、大借金でまかなうわけです。ですから、米国の赤字国債。それを誰が買うのかと言いますと、中国と日本です。特に日本に買い続けさせるわけです。小泉さんにどんどん買い続けてもらわなければ困る。ですから日本搾取の仕組みと言っているけれども、郵政民営化にしたお金をいかに米国に貢がせるか。貢ぐ方法は国債を買わせるとか。それを小泉には郵政改革、金融国際化というのをキャッチフレーズにして、日本のジャーナリストたちが政治家もあげて、郵政改革。日本の改革に必要だという風に言う。日本人というのは、だいたいこういうことに甘いんですよね。何故ですか、と言うだけの自信を持っている人がいない。みなさんも、そうならないと駄目です。わからなかったら何故ですか、郵貯と簡保が分離するのが、何故私の生活にプラスになるのですか?と聞けば良いわけです。しかし、聞かない人が多く、その人たちは知ったかぶりをするので、すぐに騙されてしまう。竹中平蔵みたいな偽学者に騙される。

 ですから、この間の選挙で、郵政改革にイエスかノーか。それでおもしろおかしく刺客劇場だのなんだのをやっていた。そのとき私は民主党にアドバイスしたんだけれども、僕のFAXは誰かに握りつぶされた。相手が郵政改革に対し、イエスかノーかで戦うのならば、対立軸をはっきりさせるためには、年金問題、子育て支援というキャッチフレーズでは駄目だと。その提案として「ブッシュのポチ、イエスかノーか」とキャッチフレーズでぶつける。それで国民は気付くのです。やっと民主党も気付いたみたいです。選挙のときは細かいことは抜きにして、ある程度スローガン化する必要があります。そのためには一般の人の関心を引かないといけない。相手が言っていることがウソだとわかる言葉をスローガン化してやる必要がある。これで初めて一般の人に選んで下さいと言うことができる。郵政改革であれだけ国民を騙しておきながら、小泉首相は俺のやることがすべて追認されたと何でもやるわけです。

 イラクからの撤兵も米国から見れば、ブッシュの言われた通りであり、あれは撤兵ではなくて偽装撤兵です。いても邪魔になるだけの兵隊さんが600人いても仕方がない。オーストラリアもオランダも、もうああいうのを警備するのは嫌だと言っていると。

 シンボリックな意味が過ぎたから帰る。そのかわり日本の海上自衛隊、海自、軍艦と空自、飛行機を米国の戦闘指揮下に直接入れて、弾運びを一生懸命やらせます。これは戦闘行為に直接参加です。撤兵じゃありません。私たちは引き金を引いてませんと言うけれども、弾運びは戦闘行為そのものなんです。相手にしてみれば日本が戦闘行為に踏み切ったのと同じ。ブッシュも小泉がコミットしてくれることがわかったから、じゃあ邪魔な600人ぐらいは引きなさいと。

 日本は搾り取られる層というのは、マンガで表すのが良いです。これも週刊金曜日のマンガを借りたんですが。日本貯金箱で、国民がせっせせっせと働いて、貯金箱にいれているわけです。しかも先行き不安になればなるほど日本人は貯金します。金利が下がると経済理論では貯金が減ることになっています。日本では利子が減れば減るほど国民の貯金が増えます。必死に働いて貯めているつもりだけれど、ところが下に穴があいていて、円はいつの間にかドルになって、米国に落ちているよと。非常に上手い絵だと思います。残念ながらそういう仕組みなわけです。ブッシュは日本からこういう形で搾り取る形をもちろん日米首脳会談ではもちろん追認しています。しかも小泉、竹中その他というのは物々交換でやる、株式交換でやる企業の売買、M&Aだとか敵対買収と言っていますが、それは無税。一番買い取りやすいために。企業を売買の対象とするというのはアングロサクソンの成果主義的な考え方の企業とは何なんだという1つの仮説です。欧州型、フランス型、いわゆるヨーロッパ型の企業とは。もちろん日本ではありません。

 日本の場合の企業とは明治維新以降、戦後の高度成長を支えたものは、企業は株主だけのものという考え方をやってこなかったわけです。しかし、今はやらせる仕組みになっている。日本でもそういう風潮が今出てきているわけです。ホリエモンだったり、村上ファンドだったりするわけです。ですから、市場原理主義、新自由主義経済というのはナンセンスなんですが、ブッシュグループの嘘の理論です。嘘の理論というのは、そういうことをやった結果、75年前、米国は大恐慌をやり、暴発させ、やっとその整理を始めて今またというわけです。歴史的にいうと資本主義というのは民主的な歯止めがなければ暴発します。米国の大恐慌や日本の昭和恐慌もそのうちの一つです。戦後では80年代から起きた日米バブル経済もその一つです。それが言えることは、いわゆる人間の暮らしを支えるための経済活動を支えるには、社会主義式の経済よりも資本主義的な方が賄型としては効率が良いということはある程度実証されました。だからと言って、資本主義を野放しにしていると、暴発します。ですから市場原理主義の考え方というのは企業は株主のものという大前提から始まるわけです。企業は株主だけのものではないというのが、欧米型及び戦後日本、明治維新後からです。本当に所有者ならば、例えばあなたが今八百屋を始めたとして、八百屋のビジネス。店に売っている果物を食べても、あなたは窃盗罪には問われません。法律的には所有者というのは、そういうことなわけです。自分の物を自分が食べるのだから、決して良いことではないのかも知れないけれど、窃盗罪には問われない。しかしながら、あなた方が株を持っている。

 それは、みなさまは何をやるべきなのか。まず、NHK受信料支払いを止めて週刊金曜日を購読すること。そういう具体的な行動から始まります。自分の生活を守るためには問題意識をはっきりと持たなければならない。それで、新聞を4つ5つとっている方は、全部今度の日米首脳会談がどのように見られているのか比べてください。見出しから内容から全く同じです。これは、元が一緒なんです。外務省だとか首相官邸の新聞係が全部同行記者団に言っているわけです。そんな新聞をいくつも取ったって何の意味もないわけです。無邪気な人は5つを比べて、みんな同じなので、本当のことだと思い込むわけですね。冗談じゃない。別々の人間が別々の切り口からやったら、仮に同じことをやっても少しはずれるはずです。複数紙とっていては、駄目。一紙にしぼって、そのかわり残りは週刊金曜日だとか、それに準ずるいろんなものをとる。
 最後にどうしてこんな日本になったんだと。比べて下さい。自民党や国粋右翼は教育プロセスが悪いと。日本の教育基本法を改正して、愛国・君が代・国家など忠君愛国に関することを入れないからこの頃家庭崩壊があり子どもの犯罪が増加しているという。冗談ではありません。全く嘘なわけです。教育基本法というものは何だというものを原点に帰って考えてみてください。教育基本法をちゃんと読む。この中で教育基本法を読んだことがある人は手を挙げてみて下さい。皆無に等しいですね。しかし、世論調査で教育基本法改正が必要だと問われると大多数が賛成している。どういう国ですか。アブノーマルですよ。教育基本法というのは1947年、ときの文部大臣である高橋誠一郎氏(元慶大教授)が作った法律です。私は数少ないその恩恵を受けた者の1人です。小学校4年生のときにたまたま敗戦になって、教科書に墨を塗ったり、そして文部省の締め付けが昭和30年代の半ばすぎから始まるまでの間に、小中高大学と多感な時期を駆け抜けることができた非常に恵まれた層なんです。文部省によるくだらない締め付けがない。それの恩恵を私は被っています。私が立派だとは言いませんが小泉さんと私を比べてみてください。小泉さんは、教育基本法を骨抜きし始めたわけです。

 教育基本法どおり、きちんと今までやってきてくれれば、ホリエモンも出てこないし、村上ファンドも出てこないし、福井、小泉、竹中などが出てきたとしてもリーダーの中枢には入れない。教育基本法を読んでいただけるとお分かりになると思うけれども、方針として示しています。いわゆる自由と規律、個人、個性を中心とするけれども、身勝手という個人ではなく、自由と規律をどういう形でやるのか、これが民主主義なわけで、自主性を育てて。そして教科書の選定も手段としては教員に任せて、自主的に選定という形になるわけですが、しかし教科書検閲制度をいれ、それをどんどん絞込みという形になるわけです。そして、偏差値教育というものは教育基本法には全く書かれていません。ゆとりある教育の下に算数の小数点を計算できる者がいなくなるのは、教えてないからいなくなるのは当たり前で、いなくなっているから、およそ3として教えて・・・と冗談ではない。高橋誠一郎が教育基本法の種本としたのは、福沢諭吉の『学問のすすめ』です。どういうことかといいますと、福沢諭吉は明治の最後に亡くなりますけれども、それを学生として福沢諭吉の最後の教えを受けたのが高橋誠一郎です。その人が文部大臣になって、教育勅語の代わりに作ったのが教育基本法です。それを昭和の半ばぐらいから、安保闘争以降、締め付けの教育の方に持っていきます。それに対抗してか、例えば東京教育大学(現在の筑波大学)の家永三郎教授の教科書検定裁判、結果的には最高裁で負けましたけれども、そういう人が出てきたのは教育基本法に戻れということです。

 今、日本がやらなければならないことは改正ではないんです。教育基本法も憲法もちゃんとあるわけです。それをなし崩しに解釈で身勝手でやっているから、そのとおり、まずやって下さい。それで不都合が出てきてから改正というのならわかります。原点に返って一度検証する必要があるわけです。自分で疑問を持たなければならないです。

 米国のブッシュグループも同じようなことをやっています。今、国旗侮辱罪をブッシュグループが可決しようとしています。この間やっと上院でも1票差で否決されましたけれども、今のところ風前の灯です。国旗を今まで燃やしたって何の罪にも問われなかった。それでは、やっぱりけしからんというのが赤い州の人たち。しかしブルーグループが何とか今それを守っている。しかしそれは風前の灯。だいたい考えることはみんな同じです。君が代を流すとき起立する。僕は一度ベトナム戦争に反対してワシントンで7月4日の大花火大会での、国歌斉唱で最後まで座ってたんです。それは色々厳しいですけれども、それはそれです。それが米国の雰囲気です。それを国旗侮辱罪を作ろうとしている。日本も今やっているわけです。国旗侮辱罪を明文化している国がいくつかあります。サダム・フセインがいたイラクがそうです。今のイランがそうです。キューバがそうです。北朝鮮もそうです。たった4つか5つです。それを日本にしようとしているわけです。

 日本の格差社会の問題、米国に全部吸い取られているしくみなど、これは全部つながっているわけです。このあと質問をお受けします。ありがとうございました。

以上(担当:鄭聖希)
質疑応答編

霍見先生©浅野ゼミ
Q.村上ファンド関係の宮内義彦オリックス社長の名前が出てこなかったが。

A.講演の中で全部言い出せば何万人か挙げなきゃならなくなる。宮内義彦さんは村上ファンドを助けたんだけど、あの人は最初からああいうビジネスをおやりになっていて、それ自体は前から日本では合法の範囲内だと僕は思っている。自分が出来ないスレスレのところを村上にやってもらったかは分からないけれども、宮内さんがおやりになっていること自体は問題だとは思わない。
 ただ、みなさんにお気をつけてもらいたいのは、検察が流す「村上はこんなに悪いことをしていたんだぞ」というのは大抵半分、検察側の意図的なリークがあります。それをみなさんそのまま信じては困るんですが、私は公判を一応待とうという形です。
 宮内さんは先取りなさっているわけです。マネーゲームというのはお金をころがして勝ち組みになる。それもある意味では先駆者です。

Q.勝ち組・負け組とよく言われますが、「サンデー毎日」とかに東大・京大に行かせるにはこのように育てなさいとか書いてありますが、本当にそうすれば勝ち組みになれるのかということと、もう一点は、国債を買っても、個人として国債の価値がなくなったり貯金がなくなったりするのか。それだったら日本のいい企業を見つけてそれに個人的に投資するのがいいのか。

A.東大・京大、同志社に入れるために塾に行かせたりいろいろやり、親は犠牲になりその結果、本当に子どもは勝ち組にのれるのか、というもっともなご質問だと思います。一般庶民の家庭からすれば、私もそうですけれども、子どもに教育を受けさせるのが唯一の子どもに誇れることだという感覚がありまして、それが将来のキャリアをかなり決定します。僕らのときもそれだったわけですが、そのためにどれだけの犠牲があるかは兼ね合いだと思うんですが、日本の大学はピンからキリまで。授業料を出す価値のあるところとないところに大別できます。だから子どもをやるなら少なくとも授業料の価値のあるところ。そういうのを皆さんは要求しなければだめなんです。米国の大学の質がある程度高いのは、教員も学生も教育の内容に関して責任を持ちますから、こんなくだらん教室でこんな授業してもう辞めさせろ、授業料を返せなんて学長のところに行きますから。しかし、受験優等生を作らないでください。塾に入れてもいいが、偏差値秀才みたいなのは思考力がないわけです。受験では思考力を問いません。暗記力と演算力だけ。自分で問題設定をしてという思考はやらない。だから受験のテクニックを勉強したほうが早く勝ちます。しかしそれは、大学での勉強、ましてや世間での勉強にはマイナスです。僕は日本からの留学生を見てますと一言で言えるのは、この頃の日本の留学生は平均で言うと、各国からの留学生と比べて、はなはだ寒気がする。思考の力ゼロ。方程式を与えると機械のように問題を解きます。ただし二次方程式を使って応用問題が解けない。受験のためにすることと勝ち組にのることというのは残念ながら分かれてくる。そのためにどうしたらいいのかというと、国語力が極端に落ちている。日本語でちゃんと読めない、書けない、話せない、考えられない人がどうして外国でできますか。まず国語力。大学に入ったあとは自分で勉強しなくちゃいけない。自分の生涯学習能力の根本は国語力。いろんな本を読む、考える、感想を書いてみる、人と話しあって自分の思想を練る。私は幸いに教育基本法の最初のうちにこういう教育を徹底して受けた。感謝しているから言えるんだけれども。
 次にマネーゲームはどうしたらいいんですか、という話になるんですが、米国の国債はドルと連携してます。ドルと円、一見金利は高いが、日本もゼロ金利をはずすとか言ってるが、米国の金利は5%、国債6%やるなんて言って、金利的にはそうですね。ただし、ドル支配の周辺、原油高になるとドルの暴落がいずれ起こる。いつかは誰にも想像できません。でもこのままいけないことは分かる。ここ3,4年の間でしたら、日本の国債よりも利回りはいいでしょう。20年、30年先とちょっと長くなると危ない。どうすればいいかというとちゃんとした会社に投資。何がちゃんとした会社かというと社会正義感のある会社。これは長期的にあがっていく。変な財務分析とか過去を見てもしかたない。経営者を見なくてはならない。僕の学生にもファンドマネージャーになっている子がいますけれども、何をしらべるのかといいますと経営者、経営者、経営者。その人の哲学を見る。そこからなにをやるのかが決まるのですから。今までの利益率が高いとかいうのはあてになりません。

浅野健一先生:国際的な通貨の問題では、イラクと朝鮮が貿易でユーロを使っていたのが、ブッシュは気に食わなかったと言われている。ユーロが対ドルでどんどん強くなっているのは、米国にとってかなりショックだろう。

Q.ブッシュ大統領の片腕ライス国務長官はやり手という評価をなさいますか。それともいわゆるブッシュ大統領のポチなのですか

A.私のライス長官の評価は正直言ってポチです。なぜかというと小泉さんと同様で側近になる人はイエスマン、イエスパーソン、イエスガールしかつけない。ブッシュはあなたは正しい、立派だよと常に言ってもらわないと不安な不安定な人間。小泉さんとまったくタイプの同じ人間。国務長官の人事だけで言うと前職のコーリン・パウエルは独立心があった。コーリン・パウエルは利用されたことがわかったとたんに嫌気がさした。早々と一期で辞めた。その後、ライスをつけると思っていた。なぜかというとポチになること。ライスはブッシュの親父さんの大統領時代にナショナルセキュリティー(国家安全保障担当)の補佐官をやっていた。超タカ派だった。ラムズフェルドとかチェイニーだとか皆超タカ派の連中は、ブッシュの親父さんの時を支えていた。親父さんは息子と違ってかなり国際感覚もあり、バランス感覚もあったが、例えば1991年の湾岸戦争に勝ったときに、ここでイラクのバグダットまで侵攻しろと、サダム・フセインの首をとれとやったわけだ。そこで親父さんがイラクに一方的に侵攻してはだめだと。大義名分が全軍を支えているんだから。アドバイスを蹴った。その後クリントンにやられ、アドバイスした人たちはホワイトハウス奪回を誓った。大統領になるには知名度があって、操作しやすいバカで、しかも自分と同じような偏見があり、批判学アレルギーがある人をとブッシュジュニアを担ぎ出した。ブッシュジュニアを担ぎ出した途端にこいつはイラクに何かあったらすぐに突っ込むと読めた。だからライスというのはその一人です。ブッシュはイエスパーソンだけを集めてる。

Q.去年の衆議院選挙のスローガン、民主党の「日本を諦めない」あれでは負けるなと言うか非常に悪い。今一番考えるのは、日本国憲法の素晴らしさ、教育基本法の素晴らしさ。米国が憲法をつくるときにいろいろと影響を与えてくれた。これを変えることはとんでもないこと。9条を守るためになるスローガンをお考えいただきたい。日本は進化しているが攻撃的資本主義とか価値の資本主義とか悪いとこばかり真似している。その点において経済学的に教えていただきたい。

A.日本の経済学で新自由主義だ資本主義だなんだかんだと特に言っている人。医者でも免許とったら大抵の技法・技能のテストをやるんだけれども、経済学者の定義はない。ファンダメンタリストと称する市場原理主義者なんですが、彼らは市場競争を市場で勝手に企業や個人が自分の欲を満たすものとする。アダム・スミスの『国富論』を読んでない人ばっかり。アダム・スミスは道徳、倫理の教授だった。当時は経済学なんてなかったから。そこで独占とか癒着反対とか厳しいルール、彼はキリスト教徒ですからキリスト教倫理、個人とは、人間とはどうあるべきか、というのをきちんとやった。それをビジネスマンとしてもやらなければいけないと言っている。それを抜きに変なところだけを、全然読んでない人が孫引き、孫孫引きでやっている。だから私はアダム・スミスに戻ってくださいと言っている。アダム・スミスの言う分業があるから市場、マーケティングが始まるわけだが、アダム・スミスは人間が単脳化して分業が進んでいくと愚鈍になってしまうよと言っている。それを忘れている。ブッシュの減税政策は配当金だとか利益株価値上がりだとか不動産値上がりで儲けている奴は無税にして、勤労者から取ろうと。それはもうだめと、反省し巻き返しが始まっている。まず企業は株主のためから始まって、企業は株価の拡大さえ図っていればいいのであって、社会の貢献とか正義とか社員のことなんて考えちゃいかんというのがミルトン・フリーズマンの言い分。同じシカゴのフリードマングループのハイエットはこれは偽学問だとはっきり言っている。企業は株主のものであるというのは一つのフィクションである。その結果特に企業の売買、しかも敵対的M&A、米国では3年後にその企業の9割はダメになっている。防衛のためにいろんな借金は抱え込むは、買った奴は儲けようとします。残念ながら日本は追従が多い。米国はいいところもあったけれど、ここ30年ほど、この市場原理主義者にぶん取られてしまって、ろくなことになってない。真似するなら良いほうを真似して欲しい。明日の日本を今のブッシュ米国にしないために、ブッシュとは関係ないブルーの米国を日本として真似してくれたらいい。
 米国にはジャーナリズムがまだ残っているということ。それを支える読者がまだいるということ。司法の独立と裁判官の独立というのがまがりなりにある。ブッシュは今、日本を真似しようとしている。日本がブッシュよりも先に行っているのはジャーナリズムの消失と裁判官の独立がなくなって、今日本は「法治国」ならぬ「法痴国」になっていること。司法改革と言って日本人をだまして悪いほうへ持っていく。司法改革でやるべきことは憲法の通り、裁判官の独立を守ること。そのためには裁判官の官僚統制をやめればいい。特に最高裁の事務局官僚にたてつくような判決を出す裁判官はいわゆる左遷。それから警察と検察の取り調べ。日米比較すると米国を真似してくれと。証拠がないと逮捕できない。逮捕しても少なくとも72時間以内に起訴か不起訴か決める。日本みたいに留置場監獄に何ヶ月も入れておくなんてサダム・フセインもうらやむようなと僕は言っていたのだかが、そういうことになっている。政治を変えないと。良識派ブルー派の巻き返しが大切だ。

Q.私は団塊の世代で、1ヶ月前に社会保険庁に行った。僕は年金を払っていない。外資系保険会社に払っている。ですからこの年金制度というのは完全に制度疲労というか金属疲労を起こしてあまり確立できていないなと思うんです。それからもう一点なんですけど、僕はDVDでチョムスキーの9.11を見たんですけど、その割には米国はイラクの戦略が非常に幼稚な感じがするが、どうですか。

A.イラク戦争に関してブッシュがなぜやったか、なぜ前から狙っていたかということからお話ししたい。仮に狙っていたとしても僕らからしたらやっちゃいかんと、もちろん。ナンセンスだから。仮にやったらあれはもう大変なことになるよと。占領と言うけれども、彼らは石油と軍事基地が欲しいもんだから、無期占領を狙っているわけです。簡単には引き上げられないよなんてアドバイスは彼らは全部無視した。それからおめでたい前提を置くわけです。幻想、ある意味では夢遊病者みたいですが、イラクの戦争というのはどんなに長くかかっても2ヶ月で終る。それから占領費にしても復興費も石油の原油の輸出費でまかなえるから、米国国民に負担はかけない。これは大前提だった。おめでたい。
 ドンパチの戦いなんだから1ヶ月かかるわけがない。そのかわり、その後ああいう国の中の部族抗争に巻き込まれるし、大変なことになって米国の死傷者がどんどん増えるわけです。絶対ズルズルとなってまぁベトナム化ということになる。しかも原油が出てくるかと言うとそうじゃない。パイプラインは破壊されるはいろいろなことで、とてもじゃない。そうすると米国から持ち出さなきゃいけない。米国のイラクのコストなんですが、イラクの戦費は公表されていないが、べらぼうにかかっているわけですね。年間で30兆円、40兆円。先が見えない。
 それをまかなうことで、どうやって得しているかと言うと兵隊が必要だ。そうすると徴兵制はやらないわけだ。ベトナムの反省として徴兵制をやめた。徴兵がないから一般の米国中の若者、男女とも徴兵できないから、イラク戦争がダメだと思っていても自分の身に降りかからないものだから、どうしても反戦の取り組みがおろそかになる。今、兵隊になっている人は兵隊になる他、職がない人たちだ。というと社会の層でいう恵まれない人。人種的に言うとラテン系、アフリカ系。低所得とプアホワイト(貧しい白人)。極貧の南部の白人。だから一般の大卒などの視点から見れば、戦争の被害というか、しかも増税で戦争をまかなうべき。増税するとみんなだめだこんな戦争、金出せないとなるんですが、それをやるとやっぱり反発を食うもんだから、借金でまかなってる。その借金を日本につけているわけですから。ですから一般国民の中でいろいろ言うわけですけれども、その被害を身にしみて感じるのはごく少数派なんです。だからここのところブッシュにイラク撤退を求めているけれども、まだ後ちょっとと言われるとひっぱられる残念な仕組みになっている。非常におめでたい仕組みだ。
 確かに被害の報道はされていませんから。すでに米国兵の被害も増えています。死者2800人、重傷者はその7倍。重傷者は報告があがらないけれども。そうすると2800人の死者ということは、それの7倍、2万人くらいの重傷者を出す。重傷者はいろいろありますけれども、これは大きなコストです。ドンパチの費用も戦費にはなるけれども、残っていくのは死んでくれたらある意味まだしも。治療する必要がありませんから。そうじゃなくて生涯治療し、リハビリしというのはものすごいコストの先送りになる。それからもう一つ日本もそうですけど、原油高。これもイラクのコスト。私は戦争が始まる7,8ヶ月前に予告したんだけど、やったら原油ってのは必ず3倍になる、大抵。なぜかというと石油エネルギー事情からみて、大体リスクプレミアムが今の原油の半分を占めている。そして今、原油が74,5ドルとなるとそれを安くしようと思えば、イラク戦争をやめるしかない。それから直接費はそうなんだけれど、間接費はこの間のカトリーナハリケーンという大災害でおわかりのように、米国国内のインフラの整備、それから堤防整備もやってないもんだから、堤防が切れちゃった。そういうインフラ設備、教育補助ぜんぶできなくなって、これがやっぱりイラク戦争のコスト、経費ですね。それからニューオリンズの災害地に普通、州兵を派遣するんですけど、なぜ派遣できなかったというとイラクに送ってしまっていたから。あるいは必要な通信機器、トラック、バスをなぜ出さなかったか。みなイラクに行ってるから。ですからイラク戦争とカトリーナの災害に対するブッシュのものすごい不手際さ。これがぴったり合わさって、大半に結びついたんですね。それ以来、ブッシュの支持率がガタンと下がったんです。私に対する悪口もグンと減りました。

Q.米国は移民の国。最近ではいわゆるイスラエとルユダヤの問題がありますね。米国のイスラエルやユダヤの影響はどうなっているのか。

A.確かに外国の中で米国の国策に影響のあるのは、敢えて言えるのはイスラエル。それから同盟国としてはやっぱりブレア首相の英国とは影響があるわけです。で、なぜ特にイスラエルかというのはユダヤの建国からのこととして、ブッシュ・グループを支えているネオコン、キリスト教原理主義者っていうのはユダヤのシオニストのグループに宗教的につながっているという面もあるわけです。
 しかし、かたや米国の国を支配しているのはワスプ(WASP)、ホワイトアングロサクソン。そういうグループです。一番影響のあるのは裏にいるWASPです。時々ユダヤ系の人が目立つ。目立つっていうのは、肩をはったりするから目立つ。目立つのは誇示せざるえない人たちがやる。確かにそういう意味ではジューイッシュ。ところがジューイッシュの中にもいろいろありまして、よく言われるブルーのグループの中の新しいジュデオ・クリスチャン。プロテスタントというのはユダヤ・キリスト新教グループの中のユダヤ教徒。非常にある意味で社会的正義感に富んでいる。米国がいろんな運動をしてみると社会運動をし、労働運動から黒人の人種差別の運動から、今では当時のベトナム反戦の運動から。それから女性解放のムーブメントの指導者にユタヤ人が多い。米国の人口の中ではユダヤ系の人々はせいぜい400万人しかいないんです。なのに、そういう社会改革の運動でリーダーシップを取った。運動、デモに参加するユダヤ系の人々は相当多い。そういうグループです。むしろ改革派のほうが近いですね、民主改革派の人たちだ。

Q.企業価値ということをいろいろおっしゃいましたけれども、株価の相対を前提にしないと話がすすまないと思うんです。どのようにお考えですか。

A.会計士だとか登記屋、都市銀行屋、ほかに計りようがないから、自分で計れないから株価をつかっている。株価と言う時、狭義の意味で、企業の影響っていうことは本当に考える。そのために最初を支えるのは株価、ファイナンシャルコストだけではない。実力もあり、その下に人間もあり。企業というコミュニティーもあるわけです。それをちゃんとやったグループは結果的には成長できるわけです。なぜベンチャービジネスのマイクロソフトが出てきたのか。例えば自動車産業を見てみると米企業の株もどんどん悪くなっていっている。トヨタとホンダは米国の消費者に歓迎されている。それを支えているビジネスモデルはなんだ。そういう企業は何に価値を置くか。株価じゃない。投資の中に、資本の中にcapitalという資本の考え方なんですが、資本の中味は4つある。

板 書
 capital
    1.finance
    2.物質的capital
    3.技術的capital
    4.social capital

 金も必要だし教育も必要。そして当然、設備投資だとか機材とかいろいろ、そういうフィジカルな物質的なcapital。それから技術capital。テクノロジー。これらだけではだめです。企業内でもコミュニティー内でも最後にくるのは絶対social capital。これは人間間のネットワークです。人事制度とか。そうでないとこれ生かせません。会計士なんかはこれ(finance)しか見えんし、これしか計ることがないから、株価で計るんだなんてことを言っている。株価では企業の社会的価値は計れない。これを見なきゃいけない。でなきゃ不完全な指標になりますよ。しかし不完全な指標であってもこっちよりも正しいものであれば、それを使って計っていくというのが正しい経営学者であり、ちゃんとした戦略家であると思う。僕は授業でもそっちのほうを全部教えます。

Q.南米国は反米でものすごく燃えていますが、日本はなぜアジアでまとまてアジア通貨をつくることをしないんですか、できないんですか。

A.小泉さんではやらないですね。やるべきだと僕も思います。アジア通貨、円ブロック。しかしそれは他も一緒にやろうというのが出てこない限り、円ブロックというのはできない。そうすると日本の周りを見渡してください。小泉さんがやってるブッシュべったりでしがみついてるあれで、それでもって円がどんどん安くなっていくだけの話、価値がないから。
 なぜできないんですかと言われると、理由は一つ。小泉。これが安倍晋三さんになっても同じです。ひとつ面白かったのは、最後になりますけれども、小泉さんが言うには靖国参拝に反対しているのは中国・韓国だけだと。そうじゃない。日本で放送されてなくて向こうで放送された話。ブッシュは小泉が必死に自分のところにくると、ならばあいつも花道で辞めろと。そうすると米国のルールからして国賓として、上下両院の合同議会で演説させる。それは米国の方から見ても最大の栄誉なんです。最大の見せ場です。今までのアジアのあれは米国から見ればそういうのを与えるに価値のある、本当のステイツマンという認識になるわけです。米国のためにもなる。それから米国が進めているような政策自身の体現者。アジアの首脳者、首脳者でなければだめですが、そういう栄誉についたのはコラソン・アキノ、マルコス王政を倒したアキノ大統領は大歓迎だったんですね。それから中国のケ小平。背の低さを感じさせない。本当の人間だったと思う。それからシンガポールのリー・クァンユー首相、僕は気に食わなかったんだけど。それで日本の総理で特に中曽根康弘首相以来、みんな議会演説をやらせてもらいたくてしょうがない。みんな哀願してるわけですよ。外務省を通じたりして。今、だめ。価値ないと思われてるから。今度、小泉のためだからやってもらおう、ブッシュもならばやらせてやるか。となったら議会の大反発があった。その大反発の先頭に立ったのは、ブッシュと同じ共和党の下院の外交委員長のヘンリー・ハイド。彼が書簡を下院議長と大統領に送って、小泉が靖国参拝をやめない限り、あんなやつを演説させちゃいかん、という手紙なんです。だからこれは日本の各紙がトップで、報じるべきニュースです。米国にどう見られているかという話だし、小泉訪米を待ち構える米国のものの見方がよく分かる。特に小泉さんが言っているように中国と韓国だけが反対しているなんてまったくそぐわない。みなさんどうですか、日本の新聞で見られた方、ちょっと手を挙げてみてください。ちょっとひやかしとか、コラムで取り上げているだけで、重大性をぴしっと出したものはない。まして一面トップに載せた新聞は皆無でしょう。小泉訪米前から騒ぎになっていたわけです。彼が合同演説させられなかったというのは、日本の品格が損じられているということなんです。残念ながら国の品格はトップの品格で決まる。その品格がもともと悪いと思っていたところだから、共同宣言とかしたってこんなの関係ない。
 それがプレスリーの物真似をしたもんだから品格もっと下がる。プレスリーのlove me tenderまでならまだしも、こすってちょーだい(rub me tender)になったから、また笑われてしまう。I want you, I need youあの日本語訳はだいぶぼかしてあるんです。米国ではもっと卑猥な言葉なんです。I want youというのは、お前と寝たいという意味なんです。ブッシュにおだてられてサングラスかけて空ギターっていうの、ギター弾くフリをして歌ってI want you, I need you, I love you。それでプレスリーの娘さんに抱きついちゃったんですね。それは大大ニュースになりました。ワシントンポストは共同声明なんてことは無視した一面を出して、その説明が「あぁ驚いた」。そしたら日本の各紙、それをどう取り上げているのかと言ったら、ワシントンポスト一面に大いにブッシュとの蜜月ぶりを謳う。冗談じゃない。あっちを無視して共同声明の方を書いてくれたら、日本の品格もなんとかなったと思うんだけど。
 だから日本のメディアを頼ったのでは、日本のことも分からないし、ましてや世界のことも分からない。日本の品格は大いに下がりました。ブッシュにしがみついている限り、日本の品格はどんどん下がり続けます。ブッシュにしがみついている限り、北朝鮮・中国との関係もうまくいきません。一番損するのは日本です。

以上(担当:岡村優里)

掲載日:2007年3月30日
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