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2008年
浅野から近況報告と今後の予定
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寒中お見舞い申し上げます。
喪中のため、新年のご挨拶を失礼させていただいておりました。
共同通信から大学へ移って間もなく14年になります。同志社において“アサノ・スクール・オブ・ジャーナリズム”が確実に育っています。
浅野ゼミ4回生(13期生)は「外国人の人権と報道」などをテーマに研究しています。13期生から4人の新聞記者が4月に誕生します。4回生は卒論を提出、今月口頭試問を行います。「DECENCY」13号の制作作業に入りました。
3回生は関西テレビのあるある捏造をきっかけにした「メディアの法規制と自律的規制」を共同研究(2年間)のテーマにしています。2回生は「イラクの自衛隊とメディア」を調べています。2回生は昨年末、愛知(航空自衛隊小牧基地など)と東京で合宿し、野中章弘さん、広河隆一さん、下村健一さん、半田滋さんに取材しました。
1回生は秋期に、ビルマで軍兵士に虐殺された長井健司さんに関する新聞とテレビの報道を調査しています。報道関係の仕事を目指す学生が多いのは心強い限りです。
昨年7月に小田実さんが亡くなりましたが、小田さんの最後のまとまった講演は浅野ゼミ主催の講演会でした。元毎日の評論家、嶌信彦氏が昨年11月、TBSラジオでゼミHPの小田さん講演記録を何度も引用してくれました。
大学に来てからずっとですが、院生、学生たちの頑張りに感心させられ、大いに刺激を受けています。
昨年4月と8月に朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を訪問しました。5度目の訪朝だった8月は日朝友好学生訪朝団の団長としての旅でした。朝鮮の統一と、日朝国交正常化を実現するために、今後も努力します。日本のメディアと政府による2002年9月17日以降の“北朝鮮バッシング”の実態をきちんと記録しておこうと思っています。
昨年9月、AFS留学した米ミズーリ州スプリングフィールドのヒルクレスト高校の40周年卒業式に参加しました。11月8日にはニューヨークのコロンビア大学で「ヤスクニ」をテーマの国際学術会議があり、「首相靖国参拝と日本メディア」と題して発表しました。
11月22日には甲山報道資料の完成を記念して、「甲山から富山へ 冤罪とメディア」を開催しました。シンポの記録は現代人文社でブックレットにする予定です。
☆雑誌記事と新刊本
「創」2月号に、香川県坂出市の祖母・姉妹殺害事件の報道を検証する記事を書きました。高松のフリージャーナリスト、砂古口早苗さん(『外骨みたいに生きてみたい』著者)と一緒に、一時犯人扱いされた山下清さんにインタビューしました。犯罪報道の犯罪が絶えず、ジャーナリズムがますます疲弊していることを示しています。
愛媛県八幡浜市で1984年から匿名報道主義の新聞をつくっている「南海日日新聞」の正月号に、記事を書きました。添付します。
「週刊金曜日」の「人権とメディア」のコラムの第一回は1月18日(金)です。
昨年12月25日に『メディア「凶乱」(フレンジー)──報道加害と冤罪の構造を撃つ』(社会評論社、2200円+税)を出版しました。四六判並製・本文13級・288頁。
富山強かん冤罪事件の被害者である柳原浩さんインタビュー、加藤紘一議員実家放火、光市事件報道(橋下徹弁護士訴訟)、秋田男児殺害事、裁判員制度とメディア責任制度、日朝関係など幅広いジャンルを扱っています。私が足を運んで取材した本です。ぜひ読んでください。
この新しい本の出版記念パーティが1月11日に東京・新宿で開かれました。恩師の白井厚慶大名誉教授、甲山事件冤罪被害者の山田悦子さんら40人が参加してくれました。
主催者からのメッセージです。
《「被害者遺族の気持ち」をタテにして報復感情を煽り、被告人や弁護士に対するバッシングを繰り返すマスコミ。冤罪が明らかになっても、過去の報道を自ら検証する意識も能力もないマスコミ。「ねつ造問題」をセンセーショナルに報じるために「事実」を「ねつ造」するマスコミ……。崩壊するマスメディアの病理を撃つ一書です。
また、浅野文春裁判は、約2年間の京都地裁での審理を経て11月20日に結審。2008年2月27日(水)午後1時10分、地裁208号法廷で判決が言い渡されます。出版パーティは文春裁判の慰労会という意味合いも込め、立食スタイルにて飲み放題のお酒を楽しんでもらいつつ、気勢を上げる集まりになればと思います。》
☆東京で講演
1月19日(土)午後6時、中野商工会館1階会議室(東京都中野区新井1-9-1 TEL.03-3389-1181)で、「グループ 武器をつくるな!売るな!」主催の「防衛利権を暴く!―「米軍再編」と安全保障で儲ける人々―」で講演します。
中野商工会館はJR中央線・地下鉄東西線 中野駅 北口下車 徒歩7分
http://www.jca.apc.org/pmn/map.html
また、新聞労連新聞研究部の第31回新研部長会議で講演します。
会議は以下のとおり。
事務局:文京区本郡2-17-17 井門ビル6階 新聞労連 新聞研究部担当 及川さん
テーマ:「裁判員制度と報道」
日時:2008年2月7日(木)13:30~8日(金)12:00
会議場:ホテル機山館(東京・本郷三丁目)
(地図 http://www3.ocn.ne.jp/~kizankan/ )
東京都文京区本郷4-37-20/TEL:03-3812-1211/FAX:03-3816-1218
私は<二日目>の朝、講演します。09:30から45分位です。
大学に移ることが決まっていた94年2月の京都での新聞研究会議で講演したことがあります。
1月5日、新聞労連の嵯峨仁朗委員長と懇談しました。新聞労連の「新聞人の良心宣言」から間もなく10年。新聞労連が「人権と報道」について新聞研究運動を活発化させて、権力に抗い、人民にやさしいジャーナリズムを構築するネットワークの中心となることを期待しています。
人権と報道・連絡会など各地の市民団体も、報道界で統一した倫理綱領を制定し、市民からの苦情を受け付けて対応する報道評議会を設置するメディア責任制度をつくる運動を強めなければなりません。
裁判員制度が来年5月までにスタートします。昨年9月には、最高裁の平木正洋総括参事官がマスコミ関係の大会での講演で、「報道禁止」6項目を挙げて、これらを報道することについて、裁判員に対し、被疑者が犯人だという予断を与える可能性があるとして、「公正な裁判のためには一定の配慮が必要だ」と述べ、報道界に指針づくりを求めました。新聞協会が1月16日に見解を発表。
新聞協会が取材・報道指針を公表しました(この指針に関しては,日弁連がかねてから提言している報道評議会設置への言及が全くなされておらず,実効性の観点で極めて不十分との誹りを免れないと思います)。この指針に関しても先生のご見解を拝聴いたしたいと思います。
これまでの「各社対応」から大きく変わっていない。
司法権力は松岡利康鹿砦社社長に対する不当な名誉棄損(刑事、長期勾留)での有罪確定、講談社の少年事件本での情報源の精神鑑定医逮捕・起訴、ビデ倫への家宅捜索、反戦ビラ配布での逆転有罪など「表現(報道)の自由」をはく奪する言論統制を強めています。
権力は裁判員制度導入を機に、メディア規制を強めてくるのは必至で、法規制を阻止すために、「表現の自由」と「報道される側の人権」を両立させるための人民による自律的な仕組みをつくり出す必要があります。
ジャーナリストの本多勝一さんに『メディア「凶乱」』を贈ったところ、本多さんから新著『南京大虐殺と日本の現在』(金曜日)が贈られてきました。本多さんは、《もう日本のマスコミはジャーナリズムではなくなりましたね。この重大なときに。戦前と同じ。この国に一切の幻想を持ちません》というメッセージを添えてくれました。
私も状況は非常に絶望的だと思いますが、マスコミ労働者にメディア改革を訴え、市民による自前のメディアを構築するための努力を今後も続けたいと思います。
08年は本当に重大な年です。
本年もどうぞよろしくお願いします。
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ジャーナリスト
同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻教授
社会学部メディア学科教授
浅野健一 |
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掲載日:2008年1月17日 |
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