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公開シンポジウム
「志布志事件とメディア」
―なぜ「架空の事件」を見抜けなかったのか―

 
 浅野ゼミでは5月29日(木)にシンポジウム「志布志事件とメディア―なぜ『架空の事件』を見抜けなかったのか―」を開催します。パネリストには、志布志事件の冤罪被害者で273日の長きにわたって勾留された中山シゲ子さん(中山信商店代表取締役、夫は中山信一県議)、同じく志布志事件での取り調べで「踏み字」を強要された川畑幸夫さん、そして弁護士の若松芳也さん(京都弁護士会)の3人です。

 志布志事件とは、2003年4月13日に鹿児島県下で投開票された県議会選で初当選した中山信一さんの陣営が、投票依頼のために「買収会合」を開き、計191万円の現金授受がったとの嫌疑で、中山さんら13人(一人が公判中に死亡)が起訴された。しかし、公判中から警察・検察の捜査手法に多くの批判が寄せられ、ついには「被告」12人全員に無罪判決が言い渡された事件です(詳しくは下記「志布志事件とは」をご参照ください)。
 多くの冤罪被害者は警察や検察の強圧的な取り調べに苦しむだけではなく、メディアによる、推定無罪の原則を無視した「推定有罪」の報道にも傷つけられています。
 この志布志事件でも、メディアがもっと早い段階での調査報道によって「架空の事件」の構造を解明していれば、無辜の市民が4年間も苦しむことはなかったのではないでしょうか。二人は無実の罪で厳しい取り調べを受け、逮捕されるという厳しい現実とどう向き合ってきたのでしょうか―。また、志布志事件でメディアがはたした役割とは何だったのか―。09年5月の裁判員制度開始を目前に控え、まさにこれから刑事裁判に関わることになる私たち市民・学生にとって、恐ろしい冤罪事件と闘った二人の証言から学ぶものはきっと多いはずです。
 浅野ゼミでは昨年11月22日に、富山・氷見冤罪事件の柳原浩さんらをお招きし、シンポジウム「冤罪とメディア 甲山から富山へ」を催し、多くの市民の方に足を運んでいただきました。このたび開催するシンポジウムはその続編と考えています。多くの方の参加を望んでいます。

日時:5月29日(木)18:30~20:30
場所:同志社大学今出川校地・明徳館21番教室(M21)
    (京都市営地下鉄烏丸線今出川駅下車徒歩2分)
〒602-8580 京都市上京区今出川通り烏丸東入 

今出川校地へのアクセス
  http://www.doshisha.ac.jp/access/ima_access.html
会場の地図
  http://www.doshisha.ac.jp/access/ima_campus.html


交通案内:京都市営地下鉄烏丸線今出川駅下車
事前申し込み不要・無料

パネリスト(敬称略):中山シゲ子、川畑幸夫、若松芳也

主催:同志社大学社会学部メディア学科浅野健一ゼミ 
〒602-0047 京都市上京区今出川通新町上ル 同志社大学社会学部 
    電話 075-251-3457(浅野研究室) 
    ファクス 251-3066(共用)
    電子メール kasano@mail.doshisha.ac.jp

中山シゲ子(なかやま・しげこ)さん
 2003年6月4日、県議選に初当選した夫の中山信一さんとともに公選法違反で逮捕された。翌年3月2日に保釈されるまで実に273日にもわたって夫妻別々に留置・勾留され続けた。その間、中山信一さんが買収した現場の図面と称する捏造証拠を示すなど、違法で過酷な取り調べで度々、自白を強要されたが、一貫して無実を主張。2007年2月23日、完全無罪の判決を勝ち取る。

川畑幸夫(かわばた・さちお)さん
 志布志市内でホテルを経営。2003年、公選法違反に問われ拷問に近い取り調べの末、7月24日に逮捕され、8月13日に保釈された。同年12月末に不起訴となったことが04年1月6日の新聞報道で分かった。取り調べでは孫らの名を記した紙を踏みつけるという「踏み字」を強制された。川畑さんは「踏み字」事件について県を提訴、07年1月18日、県に対して60万円の賠償を求める判決が出た。また、「踏み字」を強要した濵田隆広・元警部補を刑事告訴、福岡地裁が今年3月18日、濵田元警部補に懲役10カ月執行猶予3年の有罪判決を言い渡したが、被告は控訴し、福岡高裁に係属中である。

若松芳也(わかまつ・よしや)さん
 弁護士(京都弁護士会)。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会委員長。
志布志事件では「接見交通権侵害」の国家賠償請求訴訟に携わる。『苦闘の刑事弁護』(現代人文社)などの著書がある。


志布志事件とは―

▲手前の民家で「買収会合」が開かれたとされた。
懐集落にて。
08224

 2003年4月13日に行われた鹿児島県議選で初当選した中山信一さん、妻のシゲ子さんら13人が、公職選挙法違反(買収・被買収)で起訴された事件(うち1人は在宅起訴)。公判中に1名が亡くなり「被告」人は12人となった。
 買収会合の「現場」とされたのは、志布志市内から車で40分ほどの山間にある懐(ふところ)集落の一民家だった。この集落からは6世帯9人が被買収の容疑で逮捕された。
 代用監獄での違法な取り調べで、当初、6人が「自白」したが、その後「自白は強要されたもの」として6人全員が無罪を主張し否認に転じた。公判は計54回に及んだが、検察側がようやく1回目・4回目買収会合の日時(2003年2月8日と3月24日)を明らかにしたのは、審理の大半を終えた第42回公判だった。
 さらに2月8日は中山信一さんには同窓会に出席していたという明白なアリバイがあった。そのため検察側は、中山さんは同窓会を“中抜け”したと強弁したが、集落まで往復70分を超える道のりを車で行き、買収会合を開いたうえで、同窓会が催されている間に会場に戻るのは不可能であった。このことは、弁護側が求めて実施された裁判官立会いの現場検証でも証明された。このように、公判が進むにつれて捜査や検察側証拠の杜撰さが露呈した。
 鹿児島地裁は2007年2月23日の判決で弁護側の主張を全面的に認め「客観的な証拠は全くない」として12人全員を無罪とし、判決は確定した。
 志布志事件では警察の強圧的な取り調べが問題となった。とりわけ、起訴を見送られた「ビール供与事件」で取り調べられた川畑幸夫さんに対する取り調べは峻烈を極めるものだった。取調官は川畑さんの足を掴み、家族の名前などを書いた紙を複数回踏ませ自白を迫った。また、川畑さんの意識が朦朧とするなか長時間にわたって取り調べを続け、ついには川畑さんは緊急入院した。
 さらに他の被疑者に対して警察は、弁護人との接見内容を供述するように迫り、それを調書化するなどし、接見交通権を侵害した。この件については弁護士らが国賠訴訟を起こし、今年3月24日、国・県に対して550万円の賠償命令が下され、確定した。

▲川畑さんが踏まされた紙を本人が再現したもの。
川畑さんの自宅にて。
08225

 このように志布志事件とは「違法捜査のデパート」だった。なお、最高検は07年8月、「反省すべき点は率直に反省しなければならない」などとして再発防止策を報告書にまとめている。
 浅野健一教授が月刊「マスコミ市民」(TEL042-352-3226、FAX042-352-3270、Eメール masukomi-shimin@nifty.com)の08年4、5、6月号で《「架空の事件」見抜けなかったメディア。えん罪志布志事件》を3回連載している。
「マスコミ市民」のHP http://homepage3.nifty.com/masukomi-shimin/

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掲載日:2008年5月25日
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