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公開シンポジウムのご案内
沖縄返還密約とメディア

 1971年に結ばれた沖縄返還協定には、日米間で「密約」が存在していた。当初のメディアは「密約」について報道していたものの、次第に焦点は移っていった。「権力の監視」というメディア本来の役割から見て、この事件の報道の経過は正しいものだったのだろうか。

 密約取材の際の国家公務員法違反の容疑で逮捕、起訴された西山太吉記者と、西山氏の国賠訴訟の代理人を務めた藤森克美弁護士(静岡弁護士会)を招き、「真のジャーナリズム」とは何かを考える。
 また西山氏は09年1月末に、日本政府を相手取り、米国で見つかり吉野文六・元外務省アメリカ局長もその存在を認めている日米密約文書の開示を求める新たな行政訴訟を予定している。この裁判では、36年間にも及ぶ「政治犯罪」との闘争の集大成として、権力とメディアの“密約”を暴く。西山さんの訴えを聞き、マスメディアの役割について考えたい。

        <記>

日時:2009年1月15日(木)18:30~21:00
場所:同志社大学今出川校地 明徳館21(M21)
(京都市営地下鉄烏丸線今出川駅下車徒歩3分)
  
パネリスト(敬称略):西山太吉・藤森克美・浅野健一

主催;同志社大学社会学会・メディア学科
同志社大学社会学部浅野健一研究室


連絡先:同志社大学社会学部事務室  
TEL:075-251-3411
〒602-0047 京都市上京区今出川通烏丸東入 
電話 075-251-3457(浅野研究室) 
ファクス 075-251-3066(共用)
e-mail:asanokenichi@nifty.com
担当:山本翔吾(1回生ゼミ委員)
事前申し込み不要・入場無料


●パネリスト略歴●

 西山太吉さん

 1931年、山口県に生まれる。毎日新聞社の政治部記者として、首相官邸、自民党、外務省などを担当。沖縄の施政権返還時の日米間の密約について取材活動をする。
 1972年、密約取材の際の国家公務員法違反の容疑で外務省の女性事務官に続いて逮捕される。一審では無罪(女性事務官は有罪)。判決後は、毎日新聞社を退社し、福岡の西山青果株式会社に勤務する。しかし、二審で有罪。1978年の最高裁で有罪が確定。
 2005年には国に謝罪と損害賠償を求めて提訴したが、08年9月に敗訴が確定。
 著書に『沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟』(岩波新書、2007年)。

 藤森克美さん

 1945年生まれ。静岡県弁護士会に所属。1998年から2000年まで日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長を務めた。モットーは「聖域への挑戦」。
 藤森弁護士は西山さんがパネリストを務めたシンポジウムを傍聴し、その後、西山さんに手紙で国賠訴訟を勧めた。以来、西山氏とともに国賠訴訟を闘う。


沖縄返還密約事件とは:

 1972年の沖縄返還の裏には驚くべき「密約」が存在していた。それは1971年に日米間で締結された沖縄返還協定の見返りに、本来米国側が負担すべき原状回復補償費400万ドル(時価で約12億円)を、日本政府がアメリカ政府に秘密裏に支払うというものであった。そして西山太吉さん(当時毎日新聞政治部)が、「日本政府が米軍基地の原状回復補償費400万ドルを肩代わりする」という「密約」の存在を示す文書を外務省の女性職員から入手し、解説記事のなかでこれに触れ、さらに社会党の横路孝弘衆院議員に渡した。横路議員は電文をかざして政府を追及した。だが、政府は密約の存在を全面否定する一方、西山記者と女性事務官を外務省の機密文書を漏えいしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで訴追した。

 当初メディア界は、西山記者を起訴した日本政府を非難し、西山記者を擁護していた。しかし、事務官との個人的関係が起訴状に明記されると、報道の焦点は「沖縄密約」から「機密漏えい」へと変化した。そして本来の「密約の隠蔽」「政府の報道への干渉」という問題は棚上げされた。
西山記者は一審では無罪だったが、高裁で逆転有罪となった。西山記者は最高裁に上告したが、最高裁は上告を棄却し、西山記者に懲役4月執行猶予1年、女性事務官に懲役6月執行猶予1年の有罪が確定した。(*1)

 しかし、2000年5月、我部政明琉球大学教授が密約を裏付ける米国公文書を発見した。その2年後にも密約を示す別の公文書がアメリカで明らかにされた。続いて2006年2月、今度は当時の沖縄返還交渉の日本側の最高責任者であった吉野文六元外務省アメリカ局長が、北海道新聞のインタビューに応じて密約を明確に認める発言をした。現在、「密約」の存在は周知の事実であるが日本政府は未だその存在を否定し続けている。

 2005年4月、西山氏は国家賠償請求訴訟を提訴し、米国の公文書や外務省元局長の証言から「密約」の存在が明らかになったと主張したが、1審・東京地裁判決、2審・東京高裁判決はその存在の有無は判断せず、「不法行為から20年が過ぎれば損害賠償請求権は消滅する」という民法724条の規定を適用し、除斥期間を理由に訴えを退けた。そして、2008年9月2日、西山氏の上告を棄却する決定が最高裁で下され判決が確定した。さらに09年1月末には再び日本政府に密約開示を求める提訴を行なうことを表明している。(*2)

 その他に、「そんな密約はなかった」と否定し続けている政府に対して、ジャーナリストの原寿雄さん、作家の澤地久枝さん、憲法研究者の奥平康弘さんら63人が、日米政府の「密約」を記した日本側文書を公表するよう外務省と財務省に対して情報公開法に基づき請求したが、却下された。(以上)

講演会案内のチラシはこちらでDownload  chrashi_1(表)  chirashi_2(裏)
掲載日:2009年1月12日
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