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同志社大学社会学会公開講演会報告

今も続く枯葉剤の被害

坂田雅子監督「花はどこへいった」上映とトーク

ツーズー病院の平和村の子供 ド・ドク・ズエンと姉妹
映画『花はどこへいった』より (C)2007 SAKATA Masako



 10月7日に同志社大学今出川校舎新町学舎臨光館・301番教室(R301)にて、ドキュメンタリー映画監督の坂田雅子さんを招いて映画「花はどこへいった」上映会と坂田雅子監督トークを行った。
 まず、映画「花はどこへいった」を上映後、DVD「花はどこへいった」の特典映像であり、坂田監督のお連れ合いのグレッグ・デイビスさんの坂田監督のお連れ合いのグレッグ・デイビスさんの写真作品を編集した短編「Out of Time」上映した。その後、坂田監督ご自身に作品を作るに至った経緯、自らが枯葉剤の被害を調べるためにベトナムに足を運び考えたこと、これからの展望などをお話しいただいた。坂田監督は講演で映画製作を通して、「遠い過去として遠い国で送ったことは私達の生活に密接に結びついていることに気付き、私たちの今の平和な生活はいろいろな犠牲の上に成り立っていることを知ってほしい」などと話した。そして、この映画が世界を知る窓になってほしいとコメントした。
 当日は、会場にて坂田雅子さんの夫でフォト・ジャーナリストであったグレッグ・デイビスさんの額入り写真5枚を展示した。
 本講演会には企画者であるブライアン・コバート講師のほか、和田喜彦経済学部教授(環境経済学)、宇治郷毅社会学部教育文化学科教授も参加した。

略歴==============================================================
【坂田雅子さん】
ドキュメンタリー映画監督。1948年、長野県須坂市生まれ。京都大学文学部卒業。70年にグレッグ・デイビスさんと出会い結婚。76年から写真通信社インペリアル・プレス勤務、のち社長となる。98年、IPJを設立し社長に就任。2003年、グレッグの死をきっかけに枯葉剤の映画を作ることを決意。04年から06年、ベトナムと米国で被害者家族、ベトナム帰還兵、科学者らにインタビュー取材、撮影を行なう。2007年、映画『花はどこへいった』を完成させ、東京国際女性映画祭を皮切りに全国各地で上映。現在、『花はどこへいった』の続編を製作している。
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【グレッグ・デイビス(Greg Davis)さん】
フォト・ジャーナリスト。1948年、ロサンゼルス生まれ。ベトナム戦争激戦期の67年から70年、米軍兵士として南ベトナムに駐留。70年から 74年、京都在住。この時坂田雅子氏と出会う75年からパリやニューヨークのフォト・エージェンシー「シグマ」に所属、アジア各国を撮影。87年から『タイム』誌契約写真家としてアジア各国、ロシア極東地域、中国、南太平洋地域を取材。2003年4月19日、胃の不調、足の腫れを訴え、入院。5月4日、肝臓がんにより逝去。
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映画「花はどこへいった」公式HP  http://cine.co.jp/hana-doko/
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●ブライアン・コバート先生のコメントは以下のとおり。
 坂田雅子さんに同志社に来て、お話しいただいたことにお礼を申し上げます。ここにお招きできたことを光栄に思います。ある意味で、私たちがこの教室で、ベトナム戦争についてこのイベントを開くのは、適切なことです。3年前、ベトナム戦争の退役軍人であるアフリカ系アメリカ人アレン・ネルソン氏が、すぐ隣の教室でスピーチをしてくれました。それは、私たちすべてにとって、非常に感動的な経験でした。アレン・ネルソン氏がここでスピーチをした2年後(昨年)、 彼はニューヨークでガンで亡くなりました。彼のガンは、ベトナムの兵士だった時の、枯葉剤をあびたことによるものであると彼は確信していました。この映画を見ると、ベトナム戦争がまだ終わっていないことがよく分かります。
 アメリカは敗北を受け入れず、枯葉剤に苦しむベトナムの人々のことをこれまで認めませんでした。私たちはあることを覚えておかなければなりません。それは、戦争というものは、兵士が彼らの器材を荷作りして、帰国するとき、戦争が終わるのではない、ということです。いかなる戦争でもその影響は永遠に続くのです。私たちには、自分たちが見たくない不快な事実を見せてくれる坂田雅子さんのような映画製作者が必要です。私の個人的な意見としては、それらの真実を見せてくれたフォト・ジャーナリストのグレッグ・デイビス氏と坂田さんの勇気をたたえたいと思います。坂田さん、どうもありがとうございました。

●参加者の感想

 昨日は、大変素晴らしい作品に出会わせていただき、 本当にありがとうございました。
 枯れ葉剤の脅威は今も続いていて、戦争は終わっていない。ということ、そしてそんな中でも、子供への愛情をもって全力で生きている方々から生きる力を貰いました。 私自身、日本で社会的なドキュメンタリーを作っていて、釜ヶ崎の方々の生きる力や、社会の中で目を反らされている方々にこそ、目を向け、生きる力を発信できるものをメディアにのせていきたいと、考えております。(社会学部学生)

 今回、講演会に参加し映画作製、枯れ葉剤、グレッグ氏の死に真摯に向き合う坂田雅子監督の姿に感動した。監督は講演中に「すべてはつながっている」と発言された。今も残る枯れ葉剤の被害はアメリカ政府を責めるだけでは解決せず、人類が起こしてしまった戦争という行為に対して私たち一人一人が行動して解決にむかわなくてはいけないのだと感じた。(社会学部学生)

 戦争はいつの時代もそれとは直接関係のない人々に悲劇をもたらしてしまうと改めて痛感した。今回取り上げられていた枯れ葉剤はその最たる例であり、世代をまたいで産まれてくる子供の体を蝕んでいる事実には衝撃を受けた。映像の中で紹介された家族では障害を持つ子を中心に温かな家庭が築かれていたが、このような家庭は恵まれている方だと推測してしまった。中には、育児を放棄してしまう親などが存在することも想像できるからである。枯れ葉剤が撒かれなければ違う形で産まれてくる人々がいて、そこにはまた異なる家庭があったかもしれない。
 そう考えると、枯れ葉剤が奪ったものの大きさを痛感した。そしてこのベトナム戦争から、私たちは多くを学ばなければならないと感じる。やはり、一人一人が今回の映画などを通して、枯れ葉剤やベトナム戦争そのものに目を向け、「知る」ということが非常に大切であると感じた。(社会学部学生)

(了)

掲載日:2010年11月10日
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