浅野ゼミ・ゼミ生ページ・卒業生 | ||||||||
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2001年度4回生浅野ゼミ共同研究 〜少年犯罪とメディア〜
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目的 報道、とりわけ犯罪報道におけるメディア全体のモラルの低下が最近著しく、被疑者のみならず、犯罪被害者にまで執拗に取材する一部のメディアに対して我々は多くの疑問を持たざるを得ない。 特に最近は目を覆いたくなるような少年犯罪が立て続けに起こっており、事件をめぐる過激な報道が相次いでいる。ある時は犯罪者、またある時は被害者としてセンセーショナルに報道される多くの少年たち。我々は「少年犯罪」を一つの大きな柱としてテーマを設定し、人権についても併せて広く考えながら「少年犯罪とメディア」というテーマで研究を進めていくことになった。 「少年による凶悪事件」は、神戸児童連続殺傷事件、山口県母子殺害事件、愛知県豊川市の女性殺害事件、西鉄バス乗っ取り事件と続き、今日大きな社会問題となっている。メディアは『17歳』などをキーワードとし、連日様々な報道をしている。 メディアの中には少年法61条を公然と破り、少年の名誉を侵害して報道をするところもみられる。大阪・堺の少年事件では、新潮社が少年の実名・顔写真を掲載し、西鉄バス乗っ取り事件では、少年の顔写真が一部のインターネット上で出回った。事件が起きると、その社会的背景や要因にはあまり目を向けずに、事件の内容や被害者・被疑者への集中的な報道がされ、少年法に問題があるから事件が起きるのだ、というような風潮をメディアが作っているように感じる。 国会では少年法改正が論議されており、改正案は5月23日の国会で期限切れのため廃案となったものの、「年齢問題や少年の処遇のあり方などを早急に検討する」とした少年の非行対策についての決議が自由党を除く賛成多数で可決されている。この問題は先の総選挙でも政策課題の一つとして各党が議論を闘わせ、各党とも改正に対して積極的な姿勢を見せている。 特に保守党は「凶悪犯罪者の氏名の公表を検討」しており、今後の国会において大きな課題をなることは間違いない。 最近よく言われるように、本当に少年による犯罪は増加しているのだろうか。その再犯率も高いと言われているがどうなのか、そして少年の矯正はきちんと行われているのだろうか。 一般に、取材から報道に至るまでの過程はあまり知られていない。そこでより具体的に問題を考えるために、マスコミ関係者や、教育・福祉関係者、できれば事件の当事者やその家庭に話を聞いていきたい。様々な人たちからの意見を聞くことによって、より多くの方向から取り組めるのではないかと思う。 少年法の問題も視野に入れつつ、少年の犯罪を減らし、少年を更正させるために、メディアには何ができて、何をするべきなのか、成人事件の問題とも絡めて、少年犯罪報道のあるべき姿を考えていきたい。最終的には、少年犯罪報道を考える材料として、研究成果を社会へ提示できたら、と考えている。 |
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佐賀合宿の報告 | ||||||||
私たち2000年度3回生ゼミでは、「少年犯罪とメディア」を2年間に渡る共同研究のテーマとして選び、その中心を西鉄バス乗っ取り事件においています。 今回、ゼミ合宿として9月27日〜29日の3日間、佐賀県において現地調査を行ってきました。関係者の方々に貴重なお話をうかがうことができ、実りの多い合宿となりました。 以下にこの共同研究の目的と、合宿の報告を掲載いたします。 ゼミ員一同 報告 もう九月の下旬というのに、最高気温が二十度後半にまで至るまだまだ厳しい残暑が続く佐賀空港に我々は到着した。街の規模や位置、方向などまったくわからない手探りの状態で、大自然の残る佐賀空港を出発し、宿舎のかささぎ荘に向かった。 |
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浪速少年院を訪ねて | ||||||||
去る10月4日、共同研究のフィールドワークの一環として大阪茨木市の浪速少年院を訪問した。以下その時の奥平裕美院長の講義と質疑応答について。
★浪速少年院 ・ 収容定員160名 (平成12年10月4日現在 収容人員159名) (森千尋) ★
少年院についての知識 浪速少年院長 奥平裕美 先生 ★ 少年非行と矯正教育 ――少年院の現場から―― *資料参照 1. 法務教官(少年院の先生)について ★ 施設の見学 ★ビデオ ニュース番組の一内容として少年院を取り上げており、それが浪速少年院を取材したものだったので、そのビデオを見せていただいた。 ★ビデオに関する奥平院長の話(マスコミとの関わりに関連するもの) ★ 質疑応答 (奥平院長へ) Q. 少年法改正案が検討されているが、どのように考えているか。 ★見学を終えて |
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浅野ゼミの3人で二回目の佐賀訪問 |
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2001年度・浅野ゼミ4回生
2001年7月27日の昼、私たちは再び佐賀空港に降り立ちました。去年の9月27日から29日に佐賀で行った合宿に続き、二回目の佐賀訪問です。今回の目的は、山口由美子さんに会うことでした。山口さんは亡くなった塚本達子さんと共に、コンサートを見に行くために佐賀駅からバスに乗りました。その途中で事件が起こり、少年に牛刀で切りつけられて重症を負い、いまだ顔や手に後遺症を残しておられる方です。手紙と電話で何度かのやりとりがあり、研究に協力していただけることになりました。 インタビューは27日の午後1時半から山口さんの自宅で行われました。 インタビューは3時間にもおよび、事件のこと、少年について、教育について、多くのお話を聞くことができました。事件後から、山口さんはテレビや新聞、週刊誌にまで精力的に出ておられましたが、それについて「基本的にマスコミから取材の申し込みがあれば断りません。塚本先生のメッセージを伝えたいから」とおっしゃっておられました。塚本さんの開いていた幼児教室に、山口さんが息子さんと娘さんを連れて行くようになってから、15年以上にもなります。 山口さん自身は「少年が悪いのではない」と考えておられるそうです。両親、学校、地域、ひいてはこの社会を運営している大人全員が悪いのだ、という風に考えておられます。しかし、このような考え方はやはり特別なもので、ほかの被害者の方は加害者の責任に対して言及しています。そのようななかで、自分だけが「少年は悪くない」という発言をすることに後ろめたさを感じてしまい、一時期発言するのをやめようとしたことがあったそうです。それでもやはり、今まで自分が経てきた経験全部が元になってこう思えるのだ、ということを隠さずに発言しようと思えるようになり、現在に至っています。少年法改正が審議された参議院にも、参考人として出席され、「少年法改正ではなにもかわらない」という意見を述べられました。 娘さんが登校拒否になった経験とバスジャック事件に遭遇した経験からきた教育観、ご自身が子育てで苦しんだことから得た子育て観は、本当に心に響いてくるものでした。これから親になり、色んな経験をしていくだろう私たちにとって、山口さんに会えたことは、かけがえのない経験になると思います。 山口さんは今、大学に通って心理学を学びながら、自身の経験を多くの講演会で語り、塚本さんのメッセージを世の中に伝えようとしておられます。 インタビューの後、山口さんがその場で亡くなった塚本さんのお宅に電話を入れてくださり、亡くなった塚本達子さんの夫である、塚本平さんにお会いできることになりました。山口さんの車で塚本さん宅に行きました。 塚本達子さんは元小学校の教師で、学校教育に危機を感じたために仕事をやめ、自宅で幼児教室を開きました。それが16、7年前のことです。そのときから学校教育に危機を覚え、幼児教室を開き、「街角かわら版」という新聞を街角で配ったり、ほんとうに教育に生涯をかけておられた方です。私たちは、塚本達子さんが教師時代に出されていた学級通信も見せていただきました。ちょうど私が生まれた年の昭和55年のもので、手書きでほとんど毎週発行されていました。それには、学級で起こった出来事や、保護者に対する教育のアドバイスなどが書かれており、それを見るだけで、どれだけ塚本さんが教育に熱心に取り組んでいるかが伝わってくるようなものでした。 急なことにもかかわらず、塚本平さんは自身が経験された報道被害について詳細に語ってくださいました。事件の直後帰宅すると、自宅がマスコミに囲まれてしまっていたこと。画家である息子さんが、取材攻勢のために仕事を中断せざるをえなくなったこと。達子さんのお葬式に大挙して訪れ、急遽葬儀の前に全社一括で記者会見のような形で取材を受けたこと。しかも、平さんが許可をしていないのに、葬式の様子が撮影されてしまったこと。 塚本さんは、本当に多くの報道被害を経験しておられました。大切な人を亡くしてしまった直後からこんなことをされたとしたら・・と自分の身に置き換えて考えてみると、とても許すことのできる行為ではないと思いました。 塚本さんは取材の申し込みに対して、代表者を立てるよう言ったり、記事をきちんと送るように言ったり、毅然とした態度でマスコミ各社に対してのぞんでいたそうです。その塚本さんでさえ、これほど嫌な思いをされています。マスコミは取材対象に言われれば、代表者を立てて取材をしたり、きちんと記事を送ってきたりします。しかし、これからはそういう申し入れがなくてもマスコミ自身が配慮をしていかなくてはならないと思います。 三回生の初めから、バスジャック事件についての研究を続けてきましたが、被害者の方にお会いするのは初めてのことでした。去年のゼミでは、弁護士の方にだけお話を聞いていました。今回のインタビューで、より研究も深いものになると思いますし、私にとてもかけがえのない経験となりました。
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